人工知能で自殺を予防する

警察庁の自殺統計によれば、2016年の自殺者数(速報値)は21764名で、2008年(確定値)の32249名よりも1万人以上減少している。政府と地方公共団体が民間NPOなどと協力して進めてきた自殺対策が、少しずつ効果を上げてきたようだ。

それでも年間2万人以上が亡くなっている。そこで、自殺を考える人が発するメッセージを捉え、自殺予防につなげる取り組みが始まっている。たとえば、Facebookは心配な投稿を発見した友達が「この投稿を報告」すると、その人にサポートメッセージを送信したり、ヘルプラインを紹介したりする機能を2016年6月にサービスインしている。ツィッターにも同様の機能がある

雑誌Wiredは、これをさらに進め、危ない投稿を人工知能(AI)が自動的に発見する技術をFacebookなどが開発中と伝えている。今までは友達(人間)が気づいてきた大量の危ない投稿を機械学習することで、早期の介入ができるようになる。将来はウェアラブル端末を用いて、心配な人の気分や行動を常時モニターできるようになるという。

わが国でも、2016年5月に、LITALICOとUBIC(現FRONTEO)が協力して自殺の予兆を早期に発見する仕組みの開発に乗り出している。

危ない投稿と判断されても、実際には危なくないケースもあるかもしれない。しかし、その人の安全のためには誤判断も(程度問題ではあるが)許される。誤判断を絶対に避ける必要がないという点で、AIに処理しやすい問題である。今後、研究開発が進展するように期待する。