「折れない心を創りたい」
本日入学式にお邪魔した鞍手ゆたか福祉会「カレッジ早稲田」長谷川正人理事長(写真右)の言葉です。
この「カレッジ早稲田」は、特別支援学校高等部を卒業した人たちに「就労」と「福祉施設」以外の第三の選択肢として「学びの場」を提供する日本で初めての知的障碍者のための大学(福祉型大学)です。福岡を皮切りに長崎、北九州、久留米と開設。さらに26年4月に「カレッジ早稲田」(東京都新宿区)を開設し、本年で4回目の入学式を迎えられ、出席の栄を賜りました。学生の皆様、保護者の皆様ご入学まことにおめでとうございます!
■就労の前に充実した青年期を■
ご縁がありまして、先月視察をさせて頂きました。
(この日は性教育の授業でした)
これまで私は、障がい者就労支援について予算委員会等で「区市町村就労支援事業におきまして、就労に結びついたのは平均1200人。障がい者全体を考えますと、まだまだわずか。今後も福祉、労働、教育など関係各局、区市町村のより一層の連携を強く望む」等、とにもかくにも就労へつないでいくこと、都庁はむろんのこと官公庁・企業における障がい者雇用率のアップを念頭にいれて質疑を重ねてきました。
しかしながら、「福祉大学」を目の当たりにし、自分の見識の浅さを、まざまざと知ることになりました。
特別支援学校卒業生はまだ18歳なのです。であるのに、すぐに作業所あるいは就職というのは、高度成長期の集団就職時代ではあるまいし、良く考えたら彼ら、彼女らの学びの選択肢を狭めているということなるのではないかと。そもそも、高校卒業の健常者の生徒達は、社会に出る子もいますけれど、専門学校や大学といった進路という多様な選択肢があります。それと同じく、障がいをもっていても、大学や専門学校というアカデミックな教育の場で、何よりキャンパスで青春を謳歌する選択肢があって当然なのではないか?!と知るに至ったのでありました。
長谷川理事長によれば、欧米では名だたる大学が知的障がい者を受け入れ、米国では2014年、300校以上の大学に進学を果たしているとのこと。そこでは、障がいのあるなしにかかわらず、同じ人間、同じ大学生として充実した青年期を過ごし、実に楽しくキャンパスライフを謳歌しているそうです。障がい者の学生と健常者の学生がカフェで和やかに談笑する海外の動画を見せて頂いて、これは日本でも絶対に必要!!と熱くなった次第です。
■離職と再就職の課題■
まずは、こうして知的好奇心を引き出し可能性を広げることは、障がい者権利条約・障がい者差別解消法の理念からしたらある意味当然と言えば当然です。一方、長谷川理事長がカレッジを創設する最も大きなきっかけとなったの特別支援学校卒業後就職した後の離職の問題、そして一度離職をしてしまうと、再就職をせず自宅に引きこもるケースが少なくない現状でした。
特別支援学校を卒業して社会へ出た知的障がい者は就職先で、仕事や人間関係で辛いことや苦しいことがあっても何とか頑張って乗り越えようと努力をするも、それでもうまくいかず精根尽きはてて会社を休みがちになり、結果離職へ結びついてしまうそうです。そうなってしまうと「自分は社会に通用しない人間なんだ」「もう就職は無理」「社会は怖い」という思いから、働くことがトラウマになったり自信を喪失し、再就職ができず、福祉的就労か引きこもってしまうなど二度と立ち上がれなくなってしまう姿を理事長はいくつも見てきたそうです。そこで、「知的障害がある人は発達がゆるやかだからこそ健常の人たちよりも長い教育年限が必要である」「健常者のようにせめて22歳まで学校で学ぶことができれば彼らはもっと成長して社会性やモラルなどを身につけ、社会からはじき出されることも少なくなる!」と確信を持たれ、カレッジ創設に至ったのだそうです。
■教育年限延長により生まれる「折れない心」■
三重県の私立特別支援学校「聖母の家学園」や大阪の高等専修学校「やしま学園」には高等部専攻科があるため、20歳まで学ぶことができます。両校の卒業生の追跡調査の結果によると、卒業後継続して働いている定着率は56%。残りの44%は離職するもその全員が再就職をしてるとのことです。教育年限の延長こそが心田を耕し、「次こそがんばろう」というたくましさ、自己肯定感に裏付けられた自信=「折れない心」を創る根源となるということを、この調査結果は、示すものです。
教育年限延長=福祉大学の存在意義
という果敢な挑戦を続け、東京都でも展開してくださったことへ私は都議会議員として深く感謝、感動をしております。
■福祉における教育イノベーションを支える行政へ■
現在のところ、「カレッジ早稲田」は都立特別支援学校にての進路指導の選択肢に積極的には入っていないのですが、保護者の皆様の口コミパワーはすばらしく、開校4年で、募集人数の倍の申し込みがきました。私が視察している間も、生徒さんと保護者の方が見学に来てました。このように、需要があっても障がい者教育・福祉のこれまでの常識をはるかに超えて、どこにも存在していない新しい教育イノベーションをすすめていくのは並大抵のことではありません。定員急増で急ぎ、東京都福祉保健局へ届け出をするも、これまでの福岡・長崎・北九州・久留米のような手順でいかずご苦労された模様でした。関係各局へ行政手続法、行政手続き条例に則ってどのようになっているのか、私の方で確認させていただいたこと、なにより理事長及び、先生方のあきらめない粘り強い情熱、都立特別支援学校の29名もの卒業生が楽しみにしている事実によって、無事本日37名全員の入学がかなったのであります。
昨日、東京都では入都式が行われました。
小池知事は
「前例踏襲は、後退でしかない。常にチャレンジをしてほしい」
「課題があれば解決できる方法を考え行動に移す改革マインドを持ち続けて頂きたい」
と、2263名の新入職員へ語り掛けました。
知事の言葉通り、まず、都民の幸いのために動く!できないこと探しではなく、どうしたら実現できるか?!という心を持った東京都職員に育っていただくよう、引き続き働きやすい環境整備も含め若き精鋭たちを私も支えていきたいと思っております。
※参考資料「知的障がい者の大学創造への道」長谷川正人理事長著書
【お姐総括】
カレッジの理念は
「技術や知識を磨くのではない、あなたという人間を磨くのだ」
障がい者の若者たちにも、キャンパスライフを楽しみ人間を磨く教育の場を!
まずは東京都管轄の首都大学東京での実現を!
☆お姐、首都大学東京が、いの一番の福祉大学になるよう頑張れ!☆
上田令子 プロフィール