数年前、法科大学院に入学するための「共通テスト」(という名称でしたっけ?)に「論理学」の問題が出題されていました。今でも出題されていると思いますが、法科大学院側が学生数を確保するため「共通テスト」が有名無実化されていると聞いています(真偽の程は知りません)。
その頃、「対偶がわからない」という質問を受けたことがありました。
対偶というのは、「AならばB」と「BでないならAでない」との真偽は一致するので、このようなときには対偶「BでないならAでない」のほうを証明すれば「AならばB」を証明できる(対偶論法)というモノです。
具体例を出してみましょう。
「人間なら哺乳類だ」という命題は明らかですよね。しかし、この逆である「哺乳類なら人間だ」は成り立ちません。猿も鯨も哺乳類ですから。ここから導かれる原則は「逆は必ずしも真ならず」ということです。
「人間なら哺乳類だ」の対偶を考えてみましょう。「哺乳類でないなら人間でない」が対偶になります。
「人間」→「哺乳類」という命題の逆である「哺乳類」→「人間」は成り立ちません。しかし、「哺乳類ではない」→「人間ではない」は常に正しいのです。
こういう単純な問題であれば誰も頭を悩ますことはないのですが、手を変え品を変えて問題を複雑にするので、多くの受験生が悩んだようです。
最も簡単な理解の仕方は、図で描くことです。
「人間」→「哺乳類」(人間であれば哺乳類)というのは、「哺乳類」という大きな枠の中に「人間」が完全に収められていて、例外がない状態のことです。
「哺乳類」という大きな建物の中にすべての「人間」が閉じ込められて、外部から完全に遮断されているとイメージしてもいいでしょう。建物の外に出たら瞬時に死んでしまって人間でなくなるとしましょう。
「哺乳類ではない」というのは、「哺乳類」という大きな建物の外に存在するものです。
ゾンビかもしれないし、宇宙人かもしれません(笑)ともかく、「哺乳類」という大きな建物の外でも生きることができる存在です。
それらが「人間ではない」というのは明らかです。なぜなら、人間は「哺乳類」という建物から絶対に外に出られないのですから。
「哺乳類」という建物の中には猿も鯨もいます。しかし、猿も鯨も人間同様「哺乳類」という建物から出ることは出来ません。
ですから、「猿は哺乳類だ」という命題の対偶「哺乳類でなければ猿ではない」も常に成立するのです。絶対に例外はありません。
いかがでしょう?
対偶って簡単でしょ。しかし、図や建物のイメージが作れないとなかなか理解できないことが多いようです。当時は予備校で教えている講師も混乱していて、質問者がこの説明を持っていったら「あまり考えすぎない方がいいですよ」と諭されたとか…^_^;
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年4月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。