経済産業省から『標準化人材を育成する3つのアクションプラン』が発表された。ほとんどが企業に対応強化を求める内容であって、政府自体の取り組みは少ない。これでは企業が応ぜず、「笛吹けど踊らぬ」になる恐れが高い。
企業経営者に工業会などを通じて標準化活動の重要性を訴えるのが第一のアクションである。そのために、国際標準化のパラダイムシフト、国際標準化の成功・失敗事例、欧米や新興国の動向について、政府はキラーコンテンツを作成するという。実は、この種のコンテンツは数多く作成されてきた。経済産業大臣など政府幹部は工業会総会で標準化活動の重要性を訴えてきた。しかし多くの経営者はそれを「他人事」として読み、聞いてきた。その間にビジネスの中核は米国企業に奪われ、たとえば、移動通信事業者はアップルの下僕かのようになった。
第二のアクションは標準化人材に対する企業内部での人事評価制度を確立することで、第三は企業が人材育成計画を作成し実行すること。共に政府からは手出しができない。日本規格協会が支援機能を強化する、大学などで標準化人材育成教育を実施するなどの具体策も書かれているが、中核よりも周辺に触れているだけという感は否めない。
第二、第三のアクションは経営者が変わらなければ実行できない。それゆえ、第一のアクションをより実効あるものに書き換えなければならない。
どう書くべきか考えているうちに、このアクションプランが標準化関係者によって書かれたと気づいた。関係者による狭い視点での提言だから訴える力が弱いのだ。だから、メディアもほとんど取り上げなかった。
経営者に訴え、自ら気づくように促すとすれば、それは標準化活動ではなく戦略的思考の重要性である。標準化は人事や財務と同様に企業戦略実現のための道具の一つでしかない。このように割り切れば、アクションプランの内容は大きく変わっただろうに残念だ。