人はなんのために眠るのだろうか。実は科学的にもはっきりとした決着はついていない。当然ながら明確な定義も存在しない。一ついえることは、自分らしく生きるために眠ることは大切だということだろう。
本日、紹介する『できる大人9割がやっている得する睡眠法』(宝島社)は、睡眠の重要性がわかり易く説明されている。著者は薬剤師として活動をする小林瑞穂氏、コミックエッセイや書籍のイラストなどを手がける、森下えみこ氏の共著である。
まず全体のタッチはイラストが盛り込まれているので軽く読みやすい。全編イラストの軽い本かといえばそういうわけではない。イラストは各章のサマリーの役割を果たしている。読むことで理解できるが、深く理解したい人はそのまま読み進めばいいだろう。
■私たちはなぜ眠るのか
――私たちは、不眠大国ニッポンに生きている。繁華街におけばいまでも不夜城だ。24時間明かりが消えずに街が動いている。そんななか睡眠に悩む人が増えている。
「アメリカのミシガン大学の2016年発表によれば、100ヵ国の平均睡眠時間を調査したところ、日本とシンガポールが7時間24分でもっとも短いということがわかりました。睡眠時間を『しっかり眠れているかどうか』の指標にするのは間違いです。『睡眠時間』よりも『睡眠の質』のほうが重要だからです。」(小林氏)
「世界各国のさまざまな研究は睡眠時間を指標にしていますが、日本が100カ国中最下位であることは否めない事実です。世界最先端の不眠国であることは間違いなさそうです。」(同)
――睡眠について問題を感じている割合はどの程度なのだろうか。
「また、別の調査(味の素株式会社『全国睡眠意識調査(2015年)』などによれば、日本人の7割以上の人が睡眠に何らかの不満を持っているといいます。ビジネスの舞台が、世界に広がっていく時代。自分の能力を発揮していきたいならば、睡眠不足で疲れきっている場合ではありません。」(小林氏)
「欧米では、睡眠は自己管理の一貫と考えています。睡眠、心、思考、身体のつながりを理解して、睡眠を自分で管理していくことが必要です。」(同)
■悪い眠りは悪い影響を及ぼす
――睡眠不足は様々な弊害をもたらす。眠りが浅いと、心や思考に悪影響を及ぼしやる気が低下して、集中して取り組むことが難しくなる。
「ささいなことで心が乱れ、上司からの指示にも部下の仕事ぶりにもイライラします。また、自分の感情をコントロールできずに、キレやすくなります。ボーッとして思考力が働かず、判断力が鈍ります。対人関係においても、適切な言葉を選んでコミュニケーションをとることが難しくなります。」(小林氏)
「こうした状態が続き、悪化していった場合には、うつ病などの精神疾患を患うまでに追い込まれることもあります。さらに、乱れるとマイナスのことばかりが頭の中を占めてしまいます。すると、なかなか眠れず朝起きても疲れが残ってしまいます。」(同)
――眠れないことで仕事のパフォーマンスが落ちる。眠れなければ、さらにパフォーマンスが落ちる。こうなると負のループである。こればかりは気合で乗り越えられるようなものではない。あなたの睡眠の質はどうだろうか。一度ふり返ってみては。
尾藤克之
コラムニスト
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