「朝まで生テレビ!」30周年に誓う、原発問題は論じ足りない!

田原 総一朗

先日、「朝まで生テレビ!」で原発を取り上げた。福島の住民の方、政治家、学者など、賛成派、反対派がとことん話し合った。そこで改めて感じたのは、国や東京電力のいい加減さだ。

福島第一原子力発電所が、メルトダウンを起こしたのは、地震によって停電となり、津波をかぶった自家発電装置が機能しなかったためだ。

なぜ自家発電装置を高い所に置かなかったのか。事故後、さんざん論じられたことだが、実は意外に知られていない事実がある。低い場所に自家発電装置を設置してしまった理由についてだ。

アメリカの原発は内陸に建てられることが多い。アメリカの原発は、竜巻をもっとも大きな脅威とみなして作られている。対して日本の原発は、海岸沿いに建てられる。日本で恐れるべきは、竜巻ではなく、津波だ。それなのに、なぜアメリカと同じように、低い位置に自家発電装置を設置してしまったのか。福島第一原発が、アメリカのGE社などによって設計されたからである。

大熊町は、福島原発がある町だ。福島県の浜通りの中央部にある。その大熊町の町会議員の木幡ますみさんは、2007年、東京電力に対して、「高い位置に移してほしい」と提言したそうだ。ところが、「コストの問題」を理由に却下されたという。

しかし一方、東北電力の女川原子力発電所は、東北大学の学者を交えて議論を重ねた。そして、発電装置設置の高さを決めたそうだ。結果、女川原発は津波直撃による深刻なダメージを免れた。女川原発は、宮城県の女川町と石巻市にまたがる場所にある。東日本大震災の震源地は、福島第一原発より女川原発のほうが近いにもかかわらずだ。

裁判で有罪に値するかは別にして、国や東電は何らかの責任を取らねばならない、と僕は思う。なによりも、その反省をまったく感じられないからだ。

たとえば危機管理庁は設置されない。政府にも原発の責任者は、実質いない。経済産業大臣がいると言うだろうが、大臣は原発問題に触れたがらない。僕の番組にも出ないのだ。これでは責任者と呼べないだろう。

僕が『原子力戦争』という本を出して40年が経つ。「朝まで生テレビ!」は今年の4月で30周年を迎える。「朝生」は日本で初めて、原発推進派、反対派を集め、議論をした番組だ。その後、本当に原発事故が起きてしまったが、事故の反省が生かされていないばかりか、反省しているのかすら分からない。朝生30周年を迎えた今、これからもとことん議論していくのだと、僕は、あらためて誓いたい。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2017年4月17日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。