松戸市に住む9歳のベトナム人の女の子の遺体が見つかり、女の子の通っていた小学校の保護者会会長が死体遺棄の容疑で逮捕されるという事件がありました。
まだ容疑の段階なので確定的なことは言えませんが、報道では、小児性愛者であることが強く示唆されています。
相次ぐ性虐待事件
また先日、子ども向けキャンプで男児にわいせつな行為をしたうえ、その様子を撮影した疑いで、学校教諭や子ども向けキャンプ旅行の元添乗員ら6人が逮捕されました。
児童ポルノ、168人被害か 教諭ら6人、容疑で逮捕(朝日新聞)
保育所でも、悲しいことに小児性愛者による性虐待は起きています。男性保育士を心配する母親の気持ちも、あながち全く根拠がないというわけではありません。
このように、相次いで小児性愛者による性犯罪、性虐待が事件化しています。しかしこれは氷山の一角です。
性虐待というのは、最も「見えない」虐待です。子どもは自分が何をされたのか分からず、大人になってから「あれはひょっとして・・・」と後遺症に苦しむため、その時点で犯人は非常に見つけづらいのです。
雇用時に小児性犯罪歴のチェックを!
こうした子どもの犠牲となる事件を防ぐために必要なこと。それは子どもに関わる教師や保育士の採用時、またPTA等のボランティア参加時において、性犯罪歴をチェックできる仕組みです。
例えばイギリスでは、DBS( Disclosure and Barring Service )という政府部局があり、ここが各事業者が行う犯罪記録チェックのリクエスト処理を行っています。参照
DBSは警察記録を検索して、申請者にDBS証明書を発行するのです。これで、保育事業者や学校は、保育士や教師が少なくとも子どもへの性犯罪の前科がないか、チェックした上で雇用することができます。
また、ボランティアにもDBSチェックは行えるということなので、今回のケースのように、PTAのような組織に対しても活用でき、リスクを低減できるのです。
こうした仕組みは、イギリスの他にアメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国にもあるようです。
(出典: https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/8162.pdf )
しかし、日本にはありません。犯罪経歴証明書は、海外渡航や国際結婚の際に取得できますが、雇用時においては取得できません。保育所や学校や子どもに関わる団体が、小児性愛者を雇用することを防ぐ仕組みは、皆無なのです。
善意の人を疑うということ
雇用時における性犯罪履歴のチェックの話をすると、こんなご意見を持たれる方もいるでしょう。
「善意でボランティアをやってくれる人を疑うなんて」
「志を持って保育士や教師たちになろうとしてくれる人たちを、犯罪者扱いするなんて」
確かに、保育事業者として、日々保育士たち(特に男性保育士)と接する身からすると、彼らを傷つけてしまうと考えると、胸が張り裂けそうになります。我々の団体で働く男性保育士は、本当に良い人たちで、彼らが犯罪なんて犯すわけない。それは誓って言えます。
しかし、たとえ1000人に1人でも、性犯罪者がいた場合、子どもの人生に与える負の影響は計り知れません。
999のケースで「疑われるのは気持ちの良いものじゃない」と保育士やボランティアの方々に不快感を与えたとしても、1つのケースを見つけられ、子どもの人生を救えたら、どちらを優先すべきでしょうか。
僕は後者だと思います。
政府がすべきこと
亡くなった9歳のリンちゃんは、帰ってきません。しかし、これから一人でも子ども達の犠牲を減らしていくためには?
「日本版DBS」を創っていく他ないと思います。
プライバシーの問題。性犯罪者の更生の問題。様々越えていかねばならない壁はあるでしょう。しかし、子ども達が犠牲になっていくのは、もう我慢できません。
「悲しかったけど、レアケースだよね」で終わらせてはいけません。一刻も早く、実効的な議論を始めなくてはならないのではないでしょうか。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年4月17日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。