憲法改正への機運は本当に高まっているのかしら

早川 忠孝

どこでそんな話になっているのだろうか、と首を傾げている。

私自身は憲法の条文は書き換えた方がいいと思っているが、いわゆる本格的な憲法改正の機運は高まっていないはずだと思っている。

憲法改正と言えば大体はそれなりの高揚感が伴うものだが、何の高揚感もないのに憲法改正などしたらとんでもない憲法改正になって、いや、これは改悪以外の何物でもない、などと言いたくなるはずだ。

「憲法改正」と言えるほどの立派な憲法改正案をお持ちなんですか、と聞きたくなる。

国民の間から澎湃と憲法改正を求める声が上がって、それを受けて国会が憲法改正を発議するのであれば、まさに憲法改正の機が到来した、今こそ憲法改正だ、などと雄叫びを上げることが出来るのだが、今現在の私にはそういう興奮はまったくない。
無理するのは止めましょうよ、自民党の一部の人だけで燥いでいても後についてくる人は今現在は殆どいませんよ、と申し上げるところだ。

国家緊急権条項などはトンデモナイ。
そんな危ないものは、止めておきましょうよ。

国防軍の創設?
あ、それも止めておきましょう。

日本の核武装?
とてもとても。

じゃあ、何をやるの、何をやったらいいの、と問われたら、今、急がなければならないのは何もありませんね、格好をつけるためだけの改正は、時間の無駄、お金の無駄だから、本当に改正が必要になる時まで待ちましょうよ、ということになる。

おいおいおい、それじゃあ、100年経っても憲法改正など出来ないぞ、と仰るかも知れないが、どう見ても今はその時期に非ず。

慌てることは何もありませんじゃないですか、ということになる。

もっとも、維新が天下を取るような時代になったら、憲法改正は必至になるだろうなとも思っている。

憲法改正は、統治機構を根底から引っ繰り返さなければならないような特殊な政治状況が現出した時に一気に実現すべきもので、今のように、政権担当能力がある強力な政党が皆無なためにたまたま自民党一強政治になっているような政治的活力を欠いている状況では、むしろ何もしない方がいいのではないか、というのが私の基本認識である。

それでもやる?

ふーん、というところである。
さて、どんな憲法改正案を提出されるのだろうか。

自民党が野党転落時代に作った憲法改正草案は推奨しないし、責任も持たない

自民党が自主憲法制定を党是としていたことはそのとおりだが、しかしながら現時点で自民党の憲法改正草案とされている2012年策定の憲法改正案は私たちが議論して作り上げた憲法改正草案とはまったく別物になっているので、皆さんにはお薦めもしないし、またその内容について責任を分有することも出来ない。

野党転落当時に作り上げた憲法改正草案はとても国民の合意の下に、与野党を問わず大方の国民の納得が得られるような内容のものにしようという配慮を欠いているもので、真正保守、伝統保守の方々の政治闘争のマニュフェストとしての機能は十二分に果たしているが、憲法改正作業を国民的合意の下で円滑に進めていくための材料としては問題が多過ぎるので、私としてはあえて検討の対象から外すことにしている。

加藤さんや山崎さん、あるいはかつての後藤田さんやその他諸々の自民党の先達たちが思い描いていた憲法改正案とはどうも違う。

福田さんも多分違和感を持たれていたのではないかと思うが、自民党はかつての自民党と違って言いたいことがあっても自分で蓋をしてなかなか外に異論が出てこないようになっているらしく、今の自民党の閉塞的な状態の中で憲法改正論議をどんどん前に進めることには賛成できない。

内部での自由闊達な議論が乏しいのが、今の自民党の抱える深刻な問題だろうと思っている。

勿論、今の自民党にも保岡さんや船田さんのような方もおられるのだが、若い方々の議論が不足しているのがどうにも心配である。

念のため。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年5月2日の「憲法」関連の記事をまとめて転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。