日本経済新聞の報道によれば、日銀の4月末時点の総資産は497兆7463億円と1年間で約83兆円増加し、うち国債が424兆5954億円と総資産の85%となっています。1年間で約65兆円増えた計算になり、今や日銀の総資産は日本の国内総生産の約9割に膨らんでいます(図表も同紙から)。
国債の全発行残高に占める日銀の保有分は4割にまで拡大し、新規発行については日銀がほぼすべてを買い入れている状態になっています。日銀が2%のインフレを実現するために行っている量的緩和の結果ですが、これによって債券市場の流動性が低下しています。現物10年の長期国債の売買が急減し、5月に入ってから2日午後までおよそ1日半にわたって値が付かないという前代未聞の状態になりました。マーケットが日銀によってコントロールされて、国債の価格がどこにあるのかわからなくなってしまった不気味な状態といえます。
このように、政府が財政赤字を埋めるために国債を発行し、それを中央銀行である日銀が大量に保有するという構図は果たしてどこまで維持可能なのでしょうか?
日銀が国債を保有することによって、債券市場の超低金利が実現し、それによって政府の利払い負担は低い水準に抑えることができ、1000兆円の公的債務が低コストで維持することができています。これは日本政府の財政に対する信頼があって初めて可能になることです。
しかし日銀のバランスシートがこのまま毎年80兆円ペースで拡大していったら、今度は中央銀行に対する信認の低下は起こらないのでしょうか?中央銀行の信頼が低下すれば、発行通貨円の価値が下落して円安が進むことになります。
そして、日銀が国債を永遠い買い続けることもできませんから、どこかで今の動きが止まることになります。その時に、国債の買い手がどこにもいなくなり国債の暴落という可能性は無いのでしょうか?
私の提案は、このようにわからないことに、あれこれ予想するよりも、どうなっても困らないように自分の資産運用も「国と同じポジション」にしておくことです。年間の歳入が60兆円の日本の国債の残高が1000兆円というのは、年収600万円の人が1億円借金しているのと同じ状態です。返済する方法はインフレしかありません。
だとすれば、年収の10倍以上の借金をして、国と同じポジションにしておけば、インフレが起こっても対応することが可能です。借入金でインフレに強い不動産を保有しておけば、さらに急激なインフレにも対応可能になります。
そんな事態が本当に起こるかはわかりませんが、確実なことはインフレになれば、資産を大きく失うのは円の預金者であり、物価の上昇に苦しむ年金生活者であるということ。そして起こってから、手を打ってももう遅いということです。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年5月4日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は総務省サイトより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。