哨戒機 マレーシアに無償供与へ 政府、中国をけん制(日本経済新聞)
政府は海上自衛隊のP3C哨戒機のうち、使わなくなった中古品をマレーシアに無償で供与する方針だ。発展途上国に防衛装備品を無償供与できるようにする法改正後に実施する。南シナ海での同国の監視能力の向上を後押しし、海洋進出する中国をけん制する狙いだ。
政府は中国への装備品や関連技術の流出を危惧しており、そうした懸念も審査する。P3Cの開発元が米企業のため、米政府が定める国際武器取引規則(ITAR)に基づく承認も得る予定だ。
この記事だけを読むと、随分とナイーブな感じをうけます。
ただでくれてやるなんて気前が良すぎます。
むしろ、第三国のメーカーとかをかませた近代化とサポートシステムを構築すべきです。
現在のP-3Cのまま再整備しても長期の使用には耐えられません。また整備コストもかかります。
であれば近代化改修を行う必要があります。
主翼を新品に交換すればほぼ新造機と同じ飛行時間を確保できます。
これは日本飛行機にやらせばいい。実際に米軍のP-3Cの機体のこのような近代化はやった実績があります。
そうすれば日本のメーカーにカネが落ちます。
コックピット廻りやエンジンは換装しないと、維持費がかかりすぎますから、これは換装する。
コクピットをデジタル化すれば維持費が下がるだけで無く、重量も軽減するので燃費もよくなります。
エンジンを換装すれば当然燃費も維持費も安くなります。また飛行速度が増大したり、航続距離も延長できるなどのメリットも期待できます。
これらとミッションシステムの更新はエアバスとかロッキードマーティンとか丸投げすれば宜しい。
日本製を使うと機密だなんだとうるさいでしょう。外国製ならば中国に情報が渡っても知ったことじゃないし、
外国メーカーも独自に技術流出の対策を取るでしょう。
これはマレーシアと相談して、決めれば宜しい。
そしてオーバーホールは日本飛行機が担当し、運用や整備の指導などは退職した自衛官を雇用した新会社を設立して、そこが請け負えば、我が国にカネが落ちるし、自衛官の再就職先の確保にもなるでしょう。
実は同じような相談を某国駐在武官からも相談を受けたことがあります。マレーシアだけでなく、他の国、例えばベトナムとかその他の国に提案すれば宜しい。運用している機体は60機ほどですが、遊んでいる機体もあるので、また70機ほどは機体が残っているはずです。
これを商売にして、自衛官の再雇用にもつなげるビジネスモデルを構築すべきです。ほぼ新品同様、新しいミッションシステムを搭載すれば長年にわたって、我が国に整備、維持の仕事が転がり込んできます。
その場合、利益の一部は防衛費に繰り込んでもいいでしょう。
更に申せば、P-1の調達機数を減らして、そのようなP-3C近代化機を採用するという選択もあるでしょう。ミリタリーマニアな人たちは国産新兵器大好きですが、コストということには極めて無頓着です。どうしても予算という概念が理解できず、新品がいいのだと言い張ります。まあ、自衛隊も似たようなものではあるのですが、プロがこれでは困ります。
ですがP-1の維持費用は極めて高く、このままで調達数を大幅に減らされる可能性もあります。であれば、併用も一つの選択です。無論、二機種の併用によるコストや兵站の負担も勘案する必要がありますが、検討すべきだと思います。
こういうスキームを防衛省、特に装備庁と経産省あたりが組んで作るべきだと思います。そうすれば他の装備に関しても同様のビジネスが可能となります。
英国とは南アフリカなど多くの国では国防省に軍払い下げを担当する部署があります。それこそ軍艦から軍服まで販売しておりますが、そういう組織を防衛省内につくる、例えば装備庁の下部組織として作り、商社などの人間を招いて商売してはどうでしょうか。
来週発売の週刊東洋経済の自衛隊特集に協力、執筆しております。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年5月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。