昨今、頻繁に相続税の増税が議論されています。少子化の上、子どもの貧困率が増えていること等から、富の再分配を強化するためでしょう。
しかし、以前も書いたように相続税が実質的な「三重課税」になっていることや、増税すると節税目的のマンション投資やアパート経営というあの手この手の対抗策が講じられて、イタチごっこになってしまいます。
そこで、増税する前に「笑う相続人」を廃除するよう法改正することを私は提案します。
「笑う相続人」というのは、ほとんど交流のない親族が死亡したことによって棚ぼた的に遺産を受け取る人たちのことです。兄弟姉妹や甥、姪などの傍系血族がほとんどなので、これらの人たちを法定相続人から除外する民法改正を行うのです。
一般に、相続の正当化根拠として、① 被相続人(亡くなった人)の意思の尊重、② 実質的持ち分の精算、③ 遺族の生活保障 の3つが挙げられています。
生計を一にしていない兄弟姉妹等は、配偶者の内助の功のような実質的持ち分もありませんし、生活保障する必要もありません。
兄弟姉妹等の財産を残したければ「遺言」を残せば被相続人の意思が尊重されます。また、持ち分の精算や生活保障という観点から、生計を一にしていた兄弟姉妹等は特別縁故者として分与を申し立てることもできます。
現行民法が兄弟姉妹に遺留分を認めていないことを斟酌すれば、いっそ法定相続人から排除してしまった方がスッキリします。
亡くなった被相続人が遺言も残さなかった場合、滅多に顔を合わせることもなかった兄弟姉妹等に財産を承継させる必要性は全くないと私は考えます。拙著「婚姻無効」では放蕩な弟に財産を残したくない兄の気持ちや工夫を描いています。99円ですので、お読みいただければ幸いです(*^^*)
相続税を増税してしまうと、心身に障害がある子供や障害者に認定されなくとも何らかのハンディキャップを負った子供のことを思って一生懸命蓄財した親の苦労が水泡に帰してしまう怖れもあります。
相続税支払いのために、社会適応能力の乏しい子供が住み慣れた家を追い出されるのは、いくらなんでも行き過ぎでしょう(障害者の場合は、相続税の軽減措置があるにはありますが…)。
まずは、「笑う相続人」を法律上排除して、相続人ゼロで国庫帰属となったお金を子供支援に充てる方が妥当ではないでしょうか?
世の中には、たまたま甥や姪であったというだけで億単位の財産を相続する人たちが案外たくさんいるのです。たまたま血がつながっていたというだけで他人同然だった人たちに巨額の財産を渡すより、子育て支援という社会全体の利益のために用いることこそ公正だと私は考えます。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年5月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。