「小学校入学」。親にとっては、わが子の成長に対するうれしさと期待感でいっぱいになる瞬間である。一方で、「どんな小学校生活を送るのか?」「授業にちゃんとついていけるのか?」「担任の先生ってどんな人?」といった不安のタネがつきない。
『わが子が「お友達」関係で悩まない本 』(フォレスト出版) の著者である、風路京輝(以下、風路氏)は、38年のキャリアをもつ元・小学校教師である。退職後は、小学生の子どもを持つ親の疑問や不安などに答える「子育て支援」を行っている。今回は、学校や担任の先生との「正しい関係構築の方法」について聞いた。
■先生に動いてもらうためにはどうするの
――「先生が真剣に対応してくれる親」「あまり対応したくない親」。これにはある特徴があるようだ。風路氏は、日頃から良好な人間関係を築いておくことを推奨している。
「好ましくない事態が起こったときも、人間関係があれば物事がスムーズに進むのは確かですから、良好な関係を築いておくことは大切です。『Aちゃんのお母さんは、どこどこに勤めている』というだけの事務的な情報のみの方、一方は、『学校や先生のことを気づかい、わが子のことにもしっかり対応しているお母さん』。やっぱり後者のほうが、いろいろなことを対応しやすいものです。」(風路氏)
「最近は良好な人間関係どころか、最初からケンカ腰の人や『モンスターペアレンツ』と言われる、すぐには対応できにくいようなクレーム満載の親まで現れる時代です。ある学校の職員室で、先生方が、びっくりするような言葉が書いてある連絡帳について話をしたことがあります。」(同)
――ここからは実際にあった、リアリティのある話なので、自分の行動に照射して読みすすんでいただきたい。
「ある子どもの親から、連絡帳に対応してもらいたいことが書いてあったのですが、その連絡の最後の部分に書かれていた言葉は、『私も、黙っていませんから!』。最初からなかなかのケンカ腰です。すると、その隣の先生が、『そんなのまだまだ序の口だ。子ども同士がもめたことに対しての対応について意見があったんだけど、そこになんて書いてあったと思う?』とひと言。」(風路氏)
「『私も、出るところへ出ますから』。これは、その上を行くような表現です。どう対応しても、こんなことを言われるのでは、教師も真剣に対応する気力が薄れてしまいます。一方的ではなく、教師と親の両方で協力し合いながら、問題を解決していくという姿勢があるかないかが、大きなポイントと言えます。」(同)
――ビジネスの世界でも同じようなことはある。立場の優劣で理不尽なことでもまかり通ってしまうことがある。この時、大切なことは「言い分は双方にあることを理解すること」。その行動によって、「相手がどのように感じるのかを理解すること」ではないかと思う。
仮に自分が正しくても、それを強く主張することで相手を追い詰めてしまうことがある。良好な人間関係を築きたいと考えるなら、相手の立場を尊重しなけれないけないだろう。
■ではどうやって関係を構築するの
――この点については幾つかの方法があるものの、学校の役員や係をできるだけ引き受けることが最も簡単だと、風路氏は答えている。
「子どもを入学させると、いろいろなことがわからなくて不安。そう感じている親は多いものです。入学式、もしくは最初の参観日あたりに、保護者の中で学級委員や各役員、係を決めます。PTAの組織には、本部というのがあって、会長、副会長、会計、監査等がおり、その下の組織に学年委員がいて専門部会があり、活動しています。」(風路氏)
「学年行事の世話役だったり、奉仕作業のとりまとめだったり、新聞の発行だったり、教育講演会の企画運営だったり、親善スポーツ大会の運営と参加だったり、学校により若干違うものの、活動内容にそう違いはありません。」(同)
――この時に、「仕事も忙しいし、自由もきかないから面倒くさい」などと思ってはいけないようだ。
「子どものためには、できるだけ役員や係を引き受けるようにするほうがいいでしょう。学校の情報はもちろん、学校における子どもの様子を把握する機会が増えるからです。担当の先生や、それまで知らなかった保護者の方と知り合いになるチャンスです。」(風路氏)
「教師も人間です。役員や係を引き受けて、教師とのコミュニケーションが増えれば、親とも相談しやすいですし、教師も親のことをよく知っていれば、事情を理解するのも早いですし、対策も立てやすくなります。」(同)
――わが子がトラブルを抱えたときの保険としても、引き受ける価値はありそうだ。子どもを見守り、楽しい学校生活が送れる環境をつくるには、親の行動も重要になる。間違っても「モンスターペアレンツ」にはならないように、ご注意いただきたい。
参考書籍
『わが子が「お友達」関係で悩まない本 』(フォレスト出版)
尾藤克之
コラムニスト
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