トランプ政権がFBI長官の解任問題で大揺れに揺れている。報道官が「司法省副長官の薦めでFBI長官を解任した」とコメントしたが、一昨日、トランプ大統領が「自分で判断したものだ。司法省のコメントに関わらず、解任していた」とテレビのインタビューで答えたものだから、一斉にメディアがトランプ政権攻撃を始めた。報道官の説明と大統領の説明が微妙に違う(矛盾する)ため、この解任は、選挙中のトランプ陣営とロシアの関与を調査しているFBIの捜査妨害という声が一気に膨らんだのだ。司法省副長官が、自分に責任を転嫁されたことに怒り、説明を訂正しなければ辞任すると脅かしたいう噂も流れている。
このような騒ぎの中で、報道官の一人が、大統領選挙前のクリントン氏のメール問題に対するFBI長官の不手際を非難する民主党の人たちの言動を列記して(だれだれが、このように発言していたではないかと、メモを読みあげていた)、民主党がFBI長官の辞任を求めていたにもかかわらず、今になって解任を非難するのはおかしいと反論していた。
日本の政治の世界もブーメラン的発言が頻回に起こっているが、民進党にとっても解任を非難するのは、ブーメランに近いものがある。しかし、「自民党は憲法問題で内部の意見が不統一だ」と文句を言っていた民進党代表のコメントは、投げた釣り竿の針が、自分の口に突き刺さったのではないかと思えるくらい滑稽だ。また、「そもそも」とはどういう意味なのかを、国会で安倍総理に質問していた民進党議員など、もはや、論外であり、税金の無駄使いだ。
話を戻すが、トランプ大統領がツイッターで「忙しく活動している大統領の発言を、報道官が完全に正確に伝えるのは難しい」「正確性にこだわるなら、報道官の会見をしない」とコメントしたことが火に油を注ぐことになってしまった。また、FBI長官との会話を録音したかのようなコメントが、暗に長官を脅かしたのではないかとの憶測を呼び、さらに混迷を深めている。
「私はロシア問題で捜査対象かどうか、FBI長官に3回質問したが、ノーであったので、ロシアが大統領選挙に介入したことを調べる捜査に関わる解任ではない」とのコメントもメディアの耳目を集めた。捜査対象であっても、捜査側が「あなたは捜査対象だ」と言うはずがないのだから、このコメントはかなり子供じみた発言であり、逆に疑惑を深める結果となった。
当初は、日本の政治のように、言葉尻を捉えてのメディアのトランプたたきのように思われたが、ロシアの米国大統領選挙介入とそれに対するトランプ陣営の関わりに対する不信感が強く印象つけられるような状況となっている。こんな時メディアの目を逸らすベストな手段は、他に大きな事件を引き起こすことだ。
私が考えすぎかもしれないが、米国内に犠牲をもたらさないで、この話題に対する関心くをメディアから引きはがす方法は、北朝鮮への攻撃だ。予測不能の大統領であるだけに、「もしや」の可能性は否定できない。北朝鮮が核実験をするか、ミサイルを発射すれば、いい口実となりそうな気がする。三流の週刊誌のような内容だが、中国の主席との会食時にシリアにミサイルを撃ち込んだ実績?もあり、目が離せない。
編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2017年5月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。