「セミナー」「講演」「プレゼン」「カラオケ」。自分の声を録音したことはないだろうか。ところが、いざ録音した声を聞くといまいちしっくりこない。なぜ、「録音した声」と「自分で聞こえる声」は違う聞こえ方をするのだろうか。
『どんな人でも好感度アップ! の声の魔法』(青春出版社)の著者である、宮川晴代(以下、宮川氏)は、アナウンサー、司会など、声のプロとして仕事をしている。いまではプロ・アマを問わずヴォイスアップコーチとしての評価も高い。今回は、いくつかのケースを交えながらわかりやすく解き明かす。
他人が聞いているのは録音した声である
――まず、「録音した声」「自分で聞こえる声」の声の伝わり方を知らなくてはいけない。
「私のセミナーの参加者にも、自分の声が嫌いという人がたくさんいます。そうした人たちは、『若いころに録音した自分の声を聞いて、あまりにも変でショックだったから』といったことが多いのです。嫌いにはならないまでも、録音した自分の声を聞いて違和感を覚える人は多いようです。」(宮川)
「どうして自分が聞いている声と、録音した声は違うのでしょうか。私たちが普段聞いている自分の声は、『骨伝導』といって、あごの骨を伝わって体内から聞く音。対して、録音した声は、口から空気中に出ていった音。日常的に聞いている自分の声とは、伝わり方が違うわけです。」(同)
――「だったら、違っていても当然だ」と、納得できたかもしれないが、大切なことは周囲の人たちが聞いているのは、「録音した声」だということである。
「あなたが録音した自分の声を聞いて『声が変だ』『話し方が変だ』と思ったとしたら、周囲にもそう思われている可能性があることを理解しなければいけません。ちょっとショックかもしれませんが、ここは現実を受け入れましょう。そのうえで、好感を持たれる声になる努力ををすればいいのです。」(宮川氏)
「声を変えることは決して難しくありません。声を変える第一歩は『自分が話している動画』を撮ることです。携帯電話やデジタルカメラなど、お手軽に撮影できるものでかまいません。ご自身が見るだけですから、髪がボサボサでもノーメイクでもOK。早速トライしてみましょう。」(同)
――実はこの手法はあらゆる場面使われている。講師を養成するトレーニングには参加者の前で話している姿を撮影して確認する作業がある。営業マン研修のロールプレイも同じだ。自分で確認することでより客観視することが可能になる。
「自分が話している姿を可視化することは、自らを客観視する大切な作業です。準備ができたら、いますぐ録画をスタートしてください。撮影が終わったら勇気を振り絞って、再生ボタンを押してください。いかがでしたか?」(宮川氏)
誰でも、「いい声」になれる
――自分が映った映像を繰り返し確認することで、「おかしなことはない」「声量もあるいい声だ」と、肯定的に感じるようになる。
「声にコンプレックスを持つ人は、若いころに録音した自分の声のイメージを、いつまでも持ち続けていることがあります。あるいは、子どものころに友達や先生から、『声が変だ』『話し方が変だ』と言われたことが、引っかかっていたりする場合もあります。昔のイメージに引きずられて、マイナスイメージを持っているのです。」(宮川氏)
「人間の声は変わっていきます。新人と、第一線で働く社員の声は違うものです。仕事を始めて数ヶ月で、声の雰囲気が大きく変わることもあります。昔のイメージにとらわれている人には、『いま録音した自分の声』を聞いてもらうと効果的でしょう。」(同)
――「いい声」は人それぞれで、「いい声」が、あなたにとって「いい声」とは限らない。人間は千差万別、声帯のつくりも、骨格も違う。自分の声としっかり向き合うことは勇気が必要だが気張ることもない。自然体で受止めることが大切だ。
なお、宮川氏の声にはストラディバリウスと同じ周波数で、脳波にα波が現れる1/fゆらぎ成分(参考資料:体感音響研究所)を含んでいることが評判になり声のプロに転身したそうだ。機会があれば、「ストラディバリウスと同じ周波数」について聞いてみたいと思う。
参考書籍
『どんな人でも好感度アップ! の声の魔法』(青春出版社)
尾藤克之
コラムニスト
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第2回アゴラ出版道場は、5月6日(土)に開講しました(隔週土曜、全4回講義)。