「素人」の造った酒が、なぜANAファーストクラスで提供されたのか?

丸の内朝大学のフィールドワークで東北に来ています。初日は、仙台駅から鯨肉とサバの缶詰めで知られる木の屋さんに、午後から気仙沼の男山本店さんにお邪魔しました。

男山本店は、蒼天伝という銘柄のお酒で知られ、国内外の品評会やコンテストで輝かしい受賞歴があります。先週も全国新酒鑑評会で金賞を受賞したことがブログに書かれていました。また、ANAのファーストクラスに採用されたり、JR東日本の豪華旅行列車「TRAIN SUITE四季島」の車内でも提供されているそうです。

興味深いのは、そんな名酒を造っている杜氏が、酒造りの経験もほとんど無く、営業の仕事から始めた異色の経歴の方だということです。震災の翌年の2012年までは、50年以上の酒造りの経験を持つベテラン杜氏が担当していたのを、突然任されて責任者として造りはじめ、その後あっという間に数々の受賞によって評価を高めていったのです。

なぜ、酒造り50年のベテラン杜氏にできなかったことを、経験もない「素人」が短期間で成し遂げることができたのか?

これは同社の社長の菅原さんにもよく分からないそうです。ベテランの杜氏が去っていった時、正直「この会社は終わった」と腹をくくって若手に未来を託したというのが本音のようです。

現在の杜氏は柏さんという方ですが、酒造りで心がけていることが2つあると言います。1つはチームワーク、そしてもう一つは掃除だそうです。

酒造りとは1人で行うものではなく、社員が力を合わせ、大量の酒米の仕込みから、米麹を使った発酵まで、根気づよく続ける仕事です。タイミングよく温度管理をすることがキモで、力仕事が必要な場合も1人ではできません。社員の気持ちが1つのベクトルに合っていないと製造工程で思うような作業の品質が確保できないのです。

また酒づくりには清潔な環境と丁寧な仕事が求められます。酒米はきれいに洗い、削っていく。余計なものが入っていると、雑味が出たり、発酵に悪い影響があったりします。男山本店の建物は決して新しくはありませんが、隅々まで清潔感がありました。これは酒造りに限らず、ものつくりをしている場所すべてに共通する大切なことです。

菅原社長は、このような奇跡が起こったきっかけは、2011年の震災だと思っているようです。これまでの6年間には、想像を超えるような試練やストレスもあったと思います。大きな被害を被り、ピンチに陥ったことをバネにして、それをチャンスに変えてしまった。そこには、社員を大切にし、根気強く育ててきた菅原社長の誠実で実直なお人柄が、大きく貢献していると感じました。

気仙沼から世界に羽ばたく、日本酒ブランド。微力ながら、これからも応援していきたいと思います。

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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年5月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。