お子さんが中学受験をする保護者の方々は、受験直前になると心身共に苦しい日々が続きます。
人生でたった一回きりのチャンスに合格するかどうかがかかっているのですから。
もちろん、受験である以上、短期的に見れば合格が最大の目的なのでしょう。
しかし、長い目で人生を見ると、受験まで「頑張ったこと」「やり抜いたこと」で「受験の本当の目的」は達成していると私は考えます。昨今話題になっている「やり抜く力 GRIT」には、人生における最大の武器は「やり抜く力」であり、親はそれを与えてやるすべきだと書かれています。
私自身、この歳になって自分と周囲の友人や知人たちを見渡し、最後にモノを言うのは「やり抜く力」だと確信しています。
どれだけIQが高かろうが理解力が早かろうが、失敗しても失敗しても立ち上がってやり遂げようという人には勝てません。
理系の研究者は言うに及ばず、文系のサラリーマンや弁護士や税理士のような自営業を見ていても、「しつこくやり遂げる」人が成果を収めている確率がはるかに高いのです(会社等の出世には運不運もありますが…)。
中学受験勉強は範囲も広くて内容も高度です。東大理系に合格したばかりの理系の学生に中学受験の算数の問題を解かせたら、合格点がとれたのは少ししかいなかったという話も聞いています。ですから、(たとえ偏差値40台であっても)その子なりに「しつこくやり抜いた」経験は人生の大きな財産になるはずです。
大学入試のレベルが低下し(林修先生によると東大の中下位のレベル低下が著しいそうです)、社内留学制度が激減し、司法試験その他の国家試験が平易化している今日、中学受験は「やり抜く力」を身につける最高の機会だと私は思っています。
合否は時の運です。中学受験で不合格になった子供たちの方が、第一志望に合格した子供たちより大学受験で成功する確率が高いという趣旨の話を、かの森上先生から聞いたことがあります。
競争は厳しいけれど、競争に参加できなかった子供たちに比べれば、参加できただけではるかに恵まれているはずです。
参加させてもらったお子さんたちは本当に恵まれています。
合否という結果に一喜一憂するの誰しも当たり前のことです。わが子が不合格になれば、世の中の不条理を恨みたくなるのも当然です。
しかし、保護者のみなさんは、受験をする時点で既にお子さんに「やり抜く力」という大きなプレゼントを与えてあげたのです。
中学受験生の子供を持つ親の心身の苦労は並大抵のものではないですよね。一ヶ月前から食事が喉を通らなくなって点滴をしていたお母さんもいました。結果が悪くても「あくまで時の運がなかった」だけのこと。一生懸命親の期待に応えようと頑張ったお子さんを責めるようなことだけは、決してしないで下さいね。
周囲が何を言おうとも、長い人生を生きていく上でいちばん大切な力をおこさんに与えてあげたご自身を、思いっきり褒めてあげて下さい。ご自身を誇りに思って下さい。
そして、(結果如何にかかわらず)受験まで「やり抜いた」お子さんを、誇りに思って下さいね。
親こそが子供にとっての最高の理解者なのですから。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年5月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。