世の中には、とかく他人の陰口を言う人がいます。少し雑談をしていると、「〇〇さんは絶対おかしい」というような陰口が、次々と口から出てくる人も少なからずいます。一種の癖になっているのではないかと感じることさえあります。
聞き流しておけば問題ないのですが、人間というものは自分以外が攻撃対象になっている陰口はいとも簡単に信用してしまう傾向があるのです。それどころか、陰口を言っている相手に好意を抱くことすらあるのです。
例えば、ある人が「A子さんの非常識さにはあきれるわ」と、あなたに言ったとしましょう。この言葉は次のようなニュアンスを含んでいます。「あなたのような常識のある人だから話すけど)A子さんの非常識にはあきれるわ」となり、あなたのことを「常識人」だと持ち上げているのです。(あなたを信用しているから話すけど)というニュアンスは「私はあなたを信用できる人間だと評価している」と持ち上げており、いずれも聞き手であるあなたの自尊心をくすぐるようになっています。
自尊心をくすぐられ、自分を評価してくれる相手に好意を抱いてしまうのは、極めて自然なことです。
私自身、痛い経験があります。かつて、某所で教鞭を取らせていただいた時のことです。事務の某氏が上司を散々こき下ろした挙句、「あと半年で本学は資金ショートして募集停止になります」と言いました。
私が、「今春の新入生にはその旨説明したのでしょうね」と問い詰めると、説明していないとの返事。「それじゃあ、重要情報を隠して入学金等を詐取したことになり立派な詐欺罪になる。詐欺の片棒は担ぎたくないので、きちんと説明しない限り私は辞任する」と言って、結局私は辞任してしまいました。
ところが、その後も某所は何ら問題もなく運営を続けています。上司の悪口ばかり言っていた某氏は解雇されたそうで、某氏の陰口を信じてしまった私だけがバカを見てしまいました。
多くの場合、あなたの前で他人の陰口を言う人は、別の人の前ではあなたの陰口を言っているのです。あなたの前ではあなたを持ち上げておきながら、他人の前ではあなたを蔑んでいるのです。
そう割り切っておけば、陰口を安易に信用してバカを見る危険性は少なくなるでしょう。
同じように、昔から口を開けば陰口ばなり叩いている知人がいました。
ある時、公表されれば彼が職を失うような事実を知り、私は彼にそれを指摘しました。膝突き合わせてじっくり話ができると思っていたら、彼はその事実を否定するだけでなく私に対して攻撃を始めました。
私は、その事実を第三者に一切明かさず、また彼のことを他人には一切言わなかったので、事は内々に処理されました。
ところが、その後、彼の知人らしき人たちの私に対する態度が急変したのを知りました。内々に処理する前に、彼が私の陰口をあちこちで触れ回ったのかもしれません。
一人ひとりに、「彼が私の陰口を言っていませんでしたか?」と尋ね回るような情けないことはしたくありません。「陰口を言う方と、黙して批判しない方、どちらを信用するのですか?」と信じるしかないのですが、他人の陰口が聞いている側に快い響きを持つことを考えると、期待薄です。
繰り返しますが、他人の陰口を言う人達は、他人の前ではあなたの陰口を言っているものなのです。聞き流すだけならいいのですが、それを信用して行動を起こすとあなた自身に大きな不利益が及ぶこともあります。くれぐれもご注意下さいね。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年5月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。