とうとう失業率がバブル期並みになった日本

さて、2017年3月の雇用統計が発表された。完全失業率がついに2.8%に低下。若年層失業率は、4.1%に改善する。この数値はバブル期に匹敵する水準である。求人倍率も1.45倍でバブル期並みの水準を維持しているが、今回は、失業率にフォーカスをしたい。

(1) 就業者数,雇用者数
・就業者数は6433万人。前年同月に比べ69万人の増加。51か月連続の増加
・雇用者数は5728万人。前年同月に比べ58万人の増加。51か月連続の増加

(2) 完全失業者
・完全失業者数は188万人。前年同月に比べ28万人の減少。82か月連続の減少

(3) 完全失業率
・完全失業率(季節調整値)は2.8%。前月と同率

この数値だけを見ると凄いことのように思える。事実、大手新聞社は「1994年12月以来の水準」「22年振りの2%台」といった景気のいい言葉が並ぶ。さらに、日本の失業率の下落について、安倍政権の経済政策による効果として必死に印象操作をはかっている論客が散見する。しかしかなり強引な解釈で違和感を感じるものが少なくない。

就業者数が増加しているなかで、失業率が改善しているのなら「経済政策によるもの」と言えるかもしれないが、実際には、就業者数は減少傾向にある。既に足踏み状態でここから大きく改善するようにも思えない。そのため、「経済政策によるもの」とはいえない。

現状を鳥瞰するのであれば、就業者数が減少した結果、失業率も改善したと記載することが正しい。雇用環境は改善しているように見えるが実際に改善はしているかは精査が必要である。さらに、若い世代が労働市場に配置転換できていないことを充分に踏まえなければいけない。2010年以降の産業別就業者数を整理すると添付ファイルのようになる。

注)図表の番号業種は以下に該当する。
1=建設業、2=製造業、3=情報通信業、4=運輸業,郵便業、5=卸売業,小売業、6=金融業,保険業、7=不動産業,物品賃貸業、8=学術研究,専門・技術サービス業、9=宿泊業,飲食サービス業、10=生活関連サービス業,娯楽業、11=教育,学習支援業、12=医療,福祉、13=複合サービス事業、14=サービス業(他に分類されない)、15=公務

ここで注目したいのは、医療・福祉分野(図=12)の伸長である。複合サービスを除けば、全産業のなかで最も失業率低下にインパクトを与えている。少子高齢化の影響によって介護需要が拡大した。その影響により医療・福祉分野における就業者数が増加した。それが起因となり、失業率も2.8%まで改善したという仮説が成立する。

今後は、医療・福祉分野の正しい理解と、正しい投資を継続することがのぞまれている。

参考書籍
蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた? 』 (ワニブックス)

尾藤克之
コラムニスト

<アゴラ研究所からお知らせ>
―2017年5月6日に開講しました―

第2回アゴラ出版道場は、5月6日(土)に開講しました(隔週土曜、全4回講義)。
講義の様子「アゴラ出版道場第2回目のご報告