世界に先駆けて超高齢化社会が現実のものになっている日本。誰もが長い人生を「自分らしく生きたい」と願っている。ところが現実はそう簡単ではない。食が豊かになりすぎたことで、罹患リスクは高まり「悩める晩年」が社会全体を巻き込んでいるからである。
今回は、歯科医師であり、米国抗加齢医学会認定医として「米国発、最先端の抗加齢医学を誰よりもやさしく語れる歯科医師」として活動をしている、森永宏喜(以下、森永氏)に話を伺った。
■薬に頼らない治療法に注目が集まる
――健康寿命を延ばして、いつまでも若々しく元気に過ごしたいと思う人は多い。ところが、何からはじめればいいのかがわからないときには、どうすべきなのか。
「いま注目を集めているのが『オーソモレキュラー栄養医学』です。1960年代にアメリカのポーリング博士が提唱したものですが、欧米を中心に日本でも取り組むドクターが増えています。ポーリング博士は個人で2度のノーベル賞を受賞した科学者として知られています。」(森永氏)
「オーソ(Ortho)は英語で“整える”の意味が、モレキュール(Molecule)は“分子”の意味があります。つまり、栄養のバランスを整えていく治療法のことです。」(同)
――人の体は多くの細胞からできているといわれるが、この細胞のモトになっているのがタンパク質などの分子(栄養)である。体内に十分存在し、正しく機能していることが健康な状態といえる。
「病気になると、分子が不足したり正しく機能しなくなります。オーソモレキュラー栄養医学では、このようなバランスが崩れた病気の状態を薬などに頼らず、栄養素を使って整えていくというのが基本的な考え方です。当然のことながら、必要な栄養素の種類、量は人により症状によって異なります。」(森永氏)
「さらに、その人だけの食事指導や栄養療法を実施し、3~6か月後に再評価を行います。検査データは徐々によくなっていきますが、自覚症状はデータよりももっと早く改善していくケースが多いようです。」(同)
――投薬をベースとした現代の医療が、多くの病気を克服してきたことは間違いない。しかし、投薬だけでは解決できない病気も存在する。健康志向が高まるなか、必要以上に薬に頼らずに、栄養素を使って整えていくという考え方はニーズがあるようにも思える。
■歯が健康に及ぼす影響度を理解しよう
――しかし理屈ではわかっていても生活習慣はなかなか変えられるものではない。
「慣れ親しんできた食の好みや嗜好品、日々の生活習慣を変えていくのは、年齢を重ねれば重ねるほど簡単ではなくなります。『生活習慣・食習慣を日々チェックすることが必要』とわかっていても、切迫した事情でもない限り、行動を変えることは簡単ではありません。」(森永氏)
「“言うは易く行うは難し”ということですが、どうしたら行動を変えるためのハードルを低くできるかということを各々が意識してもらえればと思います。」(同)
――歯や口の中を元気に保つことは、色々な病気を防いで健康寿命を延ばすために非常に効果的と言われている。歯や口の中を良好に保つことは、生活習慣病予防などにもつながる。
「ポイントは3つです。寝る前のブラッシングで就寝中の細菌の増殖を抑えます。デンタルフロスを使うことで歯間の歯垢を除去します。さらに定期受診をすることで、異常の早期発見・早期治療はもちろん、適切なアドバイスを受けることができます。」(森永氏)
――では、歯に効果的なブラッシングとはどのようなものだろうか。また、ブラッシングに理想的な時間や回数があるのだろうか。
「歯磨きの目的は“歯垢を除去すること”にあります。人によって適したブラッシングがあるので一概には言えません。1回磨いただけで問題のない人もいますし、毎食後磨いていても症状がよくならない人もいます。自分に最も合った方法で、歯垢をきちんと除去することが大切なのです。」(森永氏)
「就寝中は唾液の殺菌作用が発揮されなくなり、細菌の働きが活発になります。歯垢が作られるリスクが何倍にも跳ね上がります。ですから、就寝前の歯磨きは不可欠です。これは、誰にも共通していえることです。」(同)
――最近では、口腔の機能が健康維持に大きく関わっているという研究結果に注目が集まっている。油断して、将来を後悔することにならないためにも、「歯と口の健康」がいかに大切か、改めて認識する必要性がありそうだ。
参考書籍
『全ての病気は「口の中」から! 』(さくら舎)
尾藤克之
コラムニスト
<アゴラ研究所からお知らせ>
―2017年5月6日に開講しました―
第2回アゴラ出版道場は、5月6日(土)に開講しました(隔週土曜、全4回講義)。
講義の様子「アゴラ出版道場第2回目のご報告」