男系論と女系論の不毛の対立に終止符のきざし :「平成皇室論」②

八幡 和郎

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宮内庁サイトより(編集部)

悠仁さまの廃嫡の可能性は消して欲しい

先日、皇位継承をめぐって、BSフジのプライムニュースで特集があった。総理補佐官の衛藤晟一、民進党の長浜博行、それに所功、百地章両先生というメンバーで男系派と女系派の対決になるかと心配したが、思いのほか、みなさん建設的で良い方向に収斂していた。

男系派の衛藤晟一氏も、まずは従来の原則である男子男系を探るべしと仰ったが、それでダメなら女系もありえないわけでないと仰ったし、所功先生も悠仁さまといいう従来の皇室典範で資格のある継承者がおられるのだから30年間は議論を凍結してよい、また、旧宮家の復活も排除する必要はないと仰った。女系論者のなかには悠仁さまを廃嫡して愛子さまにとかいうのがいるから話がややこしくなる。

これまで、男系論者と女系論者が互いを排除することに熱心なあまり議論が前に進めなかったことを考えれば、こういう前向きの議論が出てきたことは誠に好ましい。

私がかねがね主張してきたことも、少し、現実的な打開策として浸透してきたように思う。

女系容認なら明治・大正・昭和の女系子孫も対象にすべし

まず、何より、悠仁さまのあとが続かねば、旧宮家など男子男系の遠縁の人々から候補者を探すか、現在の皇室に近い女系も視野に入れるかしかないのだ。そして、どっちの場合でも候補者は十分な数がいるわけでもなく、互いに排除するどころではないのである。

さらに合わせ技ということがある。これも、すぐに、現皇室の女性に旧宮家の誰かと家婚させようとかいうように議論を限定する人が多いのだが、旧宮家のなかには現皇室と血縁的に近すぎる人も多く、むしろ、旧宮家でない男子男系の人の中に良い候補者がいるかもしれない。

たとえば、明治から昭和22年の旧宮家臣籍降下の中間の時期に多くの宮家の非嫡子が皇族から侯爵や伯爵になっている。また、江戸時代に近衛、一条、鷹司家に養子が出ており、その男子男系の子孫もいる。そのなかには、徳大寺、住友、近衛(指揮者だった秀麿の子孫)もいる。これらも女系の皇族の結婚相手としては血縁が離れているからかえって好適だ。

また、女系といったときに今上陛下の子孫だけに限定するのは理屈が通らない。それなら、明治天皇の皇女が朝香、北白川、東久邇、竹田の各宮家に嫁されているし、そのうち、東久邇家には昭和天皇の第一皇女が嫁がれて子孫も多い。さらに、三笠宮や高円宮の五人の王女さまたちが結婚されて生まれる子供は大正天皇の女系子孫だからこれも排除すべきではない。

旧宮家の猶子に若い候補者をすればよい

私がかねてから提案しているのは、ひとつは、女性宮家はその配偶者の扱いが難しすぎるので避けたほうよいということだ。それにもし女性宮家をつこうるなら今回の眞子さまのご結婚にしても皇室会議での慎重なチェックと議決がいることになる。また、国民がいかにも皇族らしく感じるのは、少なくとも20歳前後には皇族になって修行を積まれた方が良いと思う。

そこで、悠仁さまとだいたい同世代の旧宮家の子供とか女性皇族のお子様を皇族の「猶子(準養子)」というかたちで旧宮家をついでもらうことだ。時期は20歳前後が良いと思う。本人意思の確認も可能だし、資質もだいたい分かってくる時期だからだ。

そして、彼らが天皇になることはやめたほうがよい。もし悠仁さまに男子が生まれなかったときに、彼らの生まれながらにして皇族だった子どもが皇位を継ぐ候補になればいいだのだ。

それはあらかじめ順序など決めずに、立太子の時点で、本人の資質や家族状況をみてきめればいいことだ。日本の歴史では、完全な長子優先でなく、そういうかたちで決めてきたのだ。

つまり、眞子さまや愛子さま、佳子さまの孫が候補になるということだ。これなら、天皇家でなく他家が皇位を簒奪するというイメージではない。公務の担い手については、元女性皇族や旧宮家の人々に宮内庁嘱託のようなかたちに成ってもらって分担すれば良いと思う。

元皇女に公務を分担してもらって給与を支払う

それもひとつの形でなくて良い。常勤の人もいれば、パートのかたもおられていいし、家庭状況で変えていってもよい。たとえば、眞子さまなどはフルタイムでお願いすれば、生活についての経済的不安もなくなる。

また、旧宮家の人々だと、民間企業を定年で辞められた後など、たとえば、皇室に関わりの深い社寺などの行事に参加いただくとか、外国でよくやっているように輸出や観光誘致などのキャンペーンに参加していただくのに好適のはず。

皇族女性のお相手としては、もっとも望ましいのは、結婚される実家の財産と相手の本人が実力で得る収入が贅沢でなくとも十分なものであり、さらに、降嫁される女性皇族も高い収入を求めての職業活動をされることなく元皇族としての対面を保てるのが望ましいことだ。

その意味で現在は一時金が払われているが本当は年金のような形がよい。一時金と言う制度は金持ちと結婚されることが前提の制度だとおもう。例えば高齢になられた元皇族が貧困に苦しまれても皇室がめんどうをみるというわけにもいかないからだ。大事なことは元皇女としての品格を維持できる程度には国が陛下に変わってお助けするとと言うことだと思う。

そして、もうひとつ大事なことは、結婚相手を探していくなかで、好ましい条件の相手との出会いがあるように工夫することだ。とくに、悠仁さまについては、今上陛下も皇太子殿下も相手さがしにたいへんご苦労されたのだから、その反省が活かされねばならないと思う。

いずれにせよ、下々は本人やご両親、あるいは宮内庁の人々に任せていくべきだ、などという意見は非建設的だ。皇族がそんなに難しい問題を扱うことが得意とも思えないし、宮内庁にそんなスタッフも権限もないのだから無責任なだけだ。

安倍総理を始め、政治家もしっかりして欲しい。明治や大正の政治家はしっかり陛下やほかの皇族に意見してきたのである。