慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科中村伊知哉教授から、ある日メールが届いたのです。そこには、慶応大学でコンテンツの海外展開に関するイベントがあるので、パネラーになって欲しいというものでした。
僕は自民党的財産戦略調査会コンテンツ小委員会事務局長を務めていて、中村伊知哉教授とは時に、コンテンツの中身の話、コンテンツの輸出の話、デジタルアーカイブの話、オンラインゲームの話等、意見交換を良くしているし、一緒に飲み会にも参加する。その中村教授からの依頼であれば、もちろん「Yes」以外に回答はありませんでした。
他のパネラーは誰かというと一人は、自民党議員の先輩である伊藤達也衆議院議員(元金融相)、そしてもう一人が、LUNA SEAやX-JAPANのギターリストであるSUGIZOだった。バンドに詳しくない僕でも、流石にSUGIZOの名前は知ってる。世界で評価される数少ない日本のバンドのギターリストであれば、コンテンツの世界展開に意見を持ち合わせているのだろうと。そして、パネラーのことを知らないとディスカッションにならないので、SUGIZOの事を調べてみたのです。
神奈川県秦野市出身。えー、秘書時代に回っていた地区だ。秦野市長選挙に駆り出された事もあったし、陣屋での宴会にも参加した。人は不思議なもので、街を知ってる事により何となく、SUGIZOを近いものを感じたのです。そして、LUNA SEAのメンバーも神奈川県出身者ばかりなのです。そうこうしているうちに、シンポジウムの当日となり、慶応大学に訪ねて行く事になりました。車での移動中、パネラーのプロフィールを改めて確認して、テーマ での論点を自分なりにまとめ、準備万端です。
慶応大学に着くと控え室に通されて、コーヒーブレイク。打ち合わせまでの時間を過ごすことになります。打ち合わせ時間となり、別室に行くと中村教授がいて、二人で話しているとSUGIZOが入ってきました。初めましてと挨拶を済ませ椅子に座るとSUGIZOから「福田さんに会ってみたかったんです」と言われ、この人何を言ってるのか?僕は地元ではそれなりに知られているけれど、全国的な有名人でもないし、もしかして僕の選挙区、横浜市青葉区、緑区の住民なのか?それなら嬉しいことだと。
「福田さん、水素のことやってるんですよね?。僕も水素エネルギー社会に賛同しているんです」。なるほど、だから僕のこと知っていたんだ。水素の世界では少し有名な政治家で、水素エネルギー社会を構築することをライフワークとしているので。それからしばらく、コンテンツの打ち合わせはそっちのけで、水素の話で僕らは夢中になっていました。
シンポジウムの開始時間となり、打ち合わせは思うように進んでいたとは言い難い状況で舞台に登壇することになってしまいました。テーマはコンテンツの海外輸出、中村教授にナビゲートされながら、話は進んでいきます。SUGIZOの話で覚えているのは、海外に出て行くために音楽を変えたわけではなく、結果として評価がついてきているだけだ、ということ。確かに海外にミュージシャンが出ていくに際して、ローカライズを繰り返せば自分のオリジナルは無くなってしまう。それでは、飽きられてしまう。ゲームや漫画とは類が異なるということだ。そして、話は時々脱線する。SUGIZOの話はコンテンツから環境問題に広がっていたし、僕も水素関連のインフラ輸出の話もした。日本経済のために何をしていくべきか、コンテンツの海外輸出もその1つなのです。
あっという間のシンポジウム。終了し舞台を降り、控室への道すがらSUGIZOとまたまた水素の話で盛り上がる。驚いたのは3年前に僕らがつくった「水素・燃料電池ロードマップ」という2040年までの水素社会への道筋を示した政府の文章を知っていたこと、そして読んでいたこと。わずかな時間であったけれどSUGIZOが本気で水素エネルギー社会を望んでいることを確認できました。
僕にとっては、ライフワークで取り組んでる政策課題であるので、本気かどうかは直ぐにわかります。そして、帰り際に「水素政策に係るメインどころの人たちとの食事会に参加する?」と言うと、SUGIZOは即座に「是非とも参加したい」と返してきたのです。「なら誘います。水素社会実現にアーティストして協力して欲しい」と言って別れたのです。
別れて車に乗り、地元横浜に向かって走り出した時、しまった名刺交換もしていないし、連絡先も聞いてなかったことに気づいたのです。でも、連絡先は何とか調べられるだろう。逆に向こうから、僕のHPを見て連絡をくれるかもしれないと横浜に戻ったのです。
②に続く。次回は「え、コンサートで水素?」
編集部より;この記事は衆議院議員、福田峰之氏(前内閣府大臣補佐官、自由民主党、比例南関東)のブログ 2017年5月31日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、ふくだ峰之の活動日記をご覧ください。