二重党籍?小池さんの思惑をどう読むか

 

首相官邸サイトより(編集部)

小池さんは橋下維新の蹉跌に学んでいるだけだろう

維新の牽引力と期待されていた橋下氏がタレントなりコメンテーターの世界に戻って政治の表舞台から引っ込んでしまうと、一時期は飛び鳥を落とす勢いだった維新に陰りが生じてしまうのはどうしても避けられない現象だろうと思う。

橋下氏を凌ぐようなスターはまず出てこないだろうから、維新の皆さんは喘ぎながら山を登らざるを得ない。

小池さんの場合は、今年の千代田区長選挙までは脱兎の勢いで勢力を伸長してきたが、都議選本番を目前にして泥濘に足を取られてしまったようなモタモタ感を呈し始めていたことは間違いない。都民ファースト旋風を吹かせるはずだったのに、助走期間が長過ぎて少々疲労感が見え始めていた、というところだろうか。

都民ファーストの特別顧問という役どころでは、今一つ小池さんの本領発揮というところまでは行けないな、ということに気が付かれたのだと思う。

都民ファーストという地域政党を立ち上げ、希望の塾という小池政治塾を主宰した人は、やはり自ら戦いの先頭に立つ必要があるということだろう。
二元代表制に背くことになるのではないか、などという一見もっともらしい批判はあるが、小池さんがご自分の掲げる政策を何としても実現する、という覚悟を固められたのなら、まずは同志を募る必要があることは当然のことである。

小池さんが、同志と恃んでいる若い方々を苦しい戦いの戦場に送り出して、ご自分は一人安全な場所に身を置いて声援だけ送っている、というのでは、苦しい戦いを余儀なくされている若い方々が気の毒である。小池さんが髪を振り乱してまさに阿修羅のように戦っている姿を見て、若い方々も死に物狂いの戦いをするようになる。

7月の都議会議員選挙は、まさに昨年の都知事選挙で小池さんが打ち出した冒頭解散選挙だと思うことである。

現時点で都民ファーストに風が吹いていないことは、大方の人が認めているところである。
都民ファーストを名乗れば誰でも当選できるような甘いものではない。
それなりの資質があり、それなりの実績があり、それなりの運動を展開している人でなければ絶対に有権者の心を掴むことが出来ないような厳しい選挙になる、ということを覚悟しておかれることである。

紛い物では、とても当選できない。
皆さんには、何としても本物になっていただきたい。

小池さんが都民ファーストの代表に就任する、ということは、小池さんがそこまで本気にならなければなかなか展望が開けないような厳しい選挙になる、というメッセージだと思っておかれたらいい。

橋下氏は、ついに維新の政策顧問を退任する。
しかし、小池さんは、橋下氏とは逆の道を行くことにしたのだろう。

多分、これで都民ファーストの勢いが盛り返すはずである。
結構なことである。

若狭さんの離党届をどう読むか

自民党に進退伺いを出していた若狭さんが昨日、離党届を出したようだ。

まずは、執行部の方針とは異なり、自分は都民ファーストのための選挙運動に邁進しますよ、ということを宣言するためにあえて進退伺いという形を取ったのは昨年の小池さんのひそみに倣ったのだと思う。

昨年、自民党の公認で補欠選挙を戦ったばかりだったので、さすがにいきなり離党届を出す、というところまでは憚られたのだと思う。

小池さんが自民党に進退伺いを出して都知事選挙に立候補したのだから、小池さんの後を襲って自民党の公認候補となった若狭さんが小池さんと同じように自民党に進退伺いを出したうえで都民ファーストの選挙を応援することにした心境が私にはよく分かる。

自民党の懐が広ければ、都議会議員選挙が終わるまでほっとけばよかったのだろうが、さすがに今回はそういう悠長なことは出来ない、ということで若狭さんに相当なプレッシャーが掛かっていたのだろうと推測している。

自民党としては除名処分などで事を荒立てたくない、若狭さんの方から自発的に離党届を出してもらいたい、というメッセージが直接、間接に若狭さんの方に出されていたのだと思う。

都民ファーストの決起大会の前日に若狭さんが自民党に正式に離党届を出した、というのは、自民党にとっても若狭さんにとっても小池さんにとってもよかったのだと思う。

案外、水面下ではそれなりに握手しているのかも知れない。
喧嘩別れのように見えないところが、いい。

都議会議員選挙が終わったら、皆さん、笑顔で挨拶を交わされるのではないだろうか。

離党届を出した若狭さんに、今の段階であれこれ言われるのは慎まれた方がいいだろう。
生真面目に若狭バッシングなどに走ってしまったら、どこでどうなるか分からない。
二階幹事長も若狭さんも大人である。

多分、小池さんも状況をしっかり把握されているはずである。

自民党と自民党都連とは別物、という小池さんの認識はどこまで受け入れられるだろうか

二重党籍だ、などと小池さんを批判される方々がおられるが、都知事の小池さんと自民党がまともにガチンコの勝負を始めてしまうと抜き差しならないことになってしまうので、小池さんが当面の敵は自民党都連であって、自民党自体ではない、と言っているのはなかなか巧妙な戦略である。

自民党に党籍を残しながら地域政党の都民ファーストの会の代表に就任すること自体は、自民党が問題にさえしなければいいだけのことで、部外者があれやこれや口を差し挟むような問題ではなさそうだ。

小池さんが、自分は自民党から抜けたつもりだ、と言われるのは自然なことで、都知事である小池さんが自民党から縛られたくないのは当然である。

小池さんは自民党の党費を払うつもりもなく、総裁選挙に立候補するつもりもないことは明らかだ。

都知事として生きていくことを選ばれたのだから、自分の足を引っ張りかねない自民党都連には一切気兼ねしないで済むような道を小池さんが探されるのは至極当然のことだと私は思っている。

自民党都連の方々が自分に協力してくれるのなら決して自民党都連を目の敵にはしないが、今は自分の足を引っ張ろうとしてあれやこれや画策してくるから、何としても自民党都連を上回る力を獲得するために都民ファーストを立ち上げた、というだけだろう。

自民党と自民党都連とは別物だ、などという感覚が一般の有権者にどこまで受け容れられるか分からないが、基本的にすべての人から受け容れてもらいたい思っている知事としては、政権党である自民党との対決は都政の運営面で何のプラスにもならないから、回避するはずである。

自民党そのものを敵に回したくはない、という気持ちは、私にはよく分かる。

多分、若狭さんも同じだったろうと思う。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年5月31日の小池都知事関連記事をまとめて転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。