知財本部・映画振興会議 報告

知財本部・映画振興会議。アウトプットは3本柱となりました。

1 製作支援・資金調達
制作領域へ資源配分すること。特に、企画開発支援、 製作費等中小制作会社や独立系の作り手への創作機会の付与の必要性が論議されました。技能系人材・プロデューサー人材の不足も指摘されました。
これを受け、中小を含む制作会社やクリエーターの作品作りへの挑戦を支援することとし、クールジャパン機構などを活用したリスクマネーの供給策を講じるととしました。また、「クールジャパン人材育成検討会」を設置、方策を講じることとしました。この会議にはぼくも参加します。

2 海外展開
中国を中心としたアジアのマーケットへの進出支援、アニメーション分野への重点支援が議論されました。
措置として、海外市場における各種規制への対応、国際共同製作を促すため協定の交渉、中小制作会社等の海外展開促進に向けた資金調達法の検証などが挙げられました。

3 ロケ支援
道路使用・消防の観点からの許認可手続等の円滑化、予見可能性の確保の必要性(警察・消防等規制当局を交えたマニュアルの策定)などが求められました。
これを受け、内閣府が「ロケ撮影の環境改善に係る官民連絡会議」を設置し、マニュアル策定などの対策に乗り出すこととしました。

実は私、この座長を引き受けるに当たり、映画という特定ジャンルが補助金ほしいよ話を咲かせる構図になることを恐れていました。しかし杞憂。インフラや制度を整えること、海外との交渉など政府がすべき仕事に議論は集中していきました。

本委員会は3点においてチャレンジングな会議でした。

1)知財本部でコンテンツの総合政策が議論されるようになって10年以上だが、総合表現である映画に光りを当てて戦略を考えたのは初めてだったこと。

2)映画産業オールキャストで、これまでにない重たい面々だったこと。

3)映像産業のネット・スマホシフトや海外からの波が強く、映画産業を取り巻く環境が大きく動く時期だったこと。特にこの点は「映画とは何か」を問い直すものであり、政策のスコープもブレる可能性がありました。

典型は吉本興業「火花」です。ネットフリックスが資金を出して製作し、まず世界190か国にネット配信。そしてそれがNHK地上波でオンエアされる。その10話は日本映画なのか、何なのか。コンテンツの種類も、流通メディアも、ビジネスモデルも、ウィンドウ戦略も変わっていく時期です。

そのような中で、重要な政策の整理ができたと考えます。人材育成やロケ誘致等は新たに会議が設けられるなど議論が続きますが、それも含め、政府には実行を求めます。アクションです。

われわれ委員としても政府と連携しつつ、激励しつつ、前に進むよう、努めたいと考えます。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年6月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。