6月23日に東京都議会議員選挙が告示され選挙戦がスタートする。選挙は都民にとって民意を表明する重要な機会である。しかし、都議会議員の定数には一票の格差が二重に存在する。
第一の格差は「特例選挙区」である。人口が少ない島部と千代田区に定数1を与えるのが「特例選挙区」である。1995年に最高裁判所が「人口が減少した千代田区を特例として合区しなかった定数配分は、都議会に与えられた裁量権の合理的な範囲内」と判断したため続けられた。このため、島部と千代田区以外との間には一票の格差が存在する。
格差の第二の原因は定数是正での政治的な妥協である。2016年に都議会は2増2減を可決した。総定数127は維持され、北多摩第3と町田市がそれぞれ1増、中野区と北区が各1減となった。この結果、特例選挙区を除いて最大較差は改正前の2.65が2.48まで縮小したというが、2倍以上の格差が依然として残っている。人口が少ないのに定数が多い逆転現象も、改正前の13通りが改正後には6通りに減っただけで解決していない。
2016年改正で評価できるのは千代田区を特例選挙区から外すとした点である。しかし、選挙後には「投票価値の平等を保障した憲法に違反する」と主張する、選挙無効を求める訴訟が提起されるだろう。
一票の格差が二重に存在するため、都議会議員選挙の結果は民意を正確に反映するものにはならないと、あらかじめわかっている。しかし、多くの有権者は投票に出向くだろう。それしか民意を表明する機会がないし、投票率は高いほうがよい。
ところで、国政選挙や都議会議員選挙の都度、違憲訴訟が提起されてきた。憲法第14条で「すべて国民は、法の下に平等」と定めているのに、一票の価値に差があるのは間違っているというのが提訴の根拠である。「憲法は理想、法律は現実」という河野洋平氏に代表される不思議な意見もあるが、民意を正確に反映させるためにも、一票の格差はできる限り解消すべきである。