午後は、農業振興に関係する二つの事業が俎上に上った。「環境保全型農業直接交付金」と「農業競争力強化基盤整備事業」である。
「環境保全型農業直接交付金」は有機農業を営む集団に対する助成である。化学肥料・化学合成農薬を5割以上低減することで自然環境の保全に資する。生物多様性の保全にも効果がある。有機農業は生産費が上がり、収穫した農産物は高く売れるが収量が落ちる。そこで、化学肥料などを使う農業との収益差を補てんするのが、この事業である。
「農業競争力強化基盤整備事業」は、小規模な田や畑を集約することで生産コストを下げようという事業である。高齢化に伴って耕作を放棄する農家があるが、そんな農地も集約して「担い手」と呼ばれる若い農業経営者に大規模な耕作を委ねる。
健康に金をかけてもよい人々向けが第一の事業で、品質と共に低価格も要求する多数派に向けたが後者である。ハイエンドとボリュームに二分して需要に応えようという方法論はわかりやすい。「環境保全型農業直接交付金」については、有機農産物の市場を確立することで助成から手を引いていくロードマップを作るべき、「農業競争力強化基盤整備事業」もいつまでも続けるのではなく終了年度を定めるべきというのが、公開プロセスの結論となった。
「国際農林水産物・食品への理解増進事業」については、農林水産省が直営でイベントなどを開催するのではなく、民間や各地域の自主的な取り組みを支援する裏方に回るのがよいという結論であった。
「革新的技術開発・緊急展開事業」では、テーマ設定の段階で生産者等にヒアリングし、その後に公募・審査・採択された研究開発課題が推進されている。実行段階では進捗が管理され、年度評価が悪いと打ち切りになる場合もある。最終年度には終了評価も実施される。農林水産省職員のほか有識者が審査や評価を実施する。つまり、研究開発資金を渡して後は自由にというのではなく、段階ごとにチェックし指導するというのが特徴である。
記事「軍事研究に関する新声明案にぬか喜びする朝日新聞」でも説明したが、この事業では研究中の進捗が管理されるなど介入は著しい。しかし、それは農林水産業の競争力強化という行政目的に沿って事業が実施されているからである。公開プロセスの結論は、研究開発成果が現場で実装されるまでしっかりフォローせよというもので、より強い管理を求めるものになった。