水産物の輸出対策は効果的に実施されているのか?

6月13日に農林水産省の行政事業レビュー公開プロセスが実施された。午前中のハイライトは「水産物輸出促進緊急推進事業」。欧米は水産物の衛生管理のためにHACCPという基準を設けている。2015年度から、水産庁はHACCPの認定を求める施設に補助金を出してきた。対欧向け施設数は米国1132・中国758・カナダ620・ベトナム497などに比較して少なく事業開始後の16年度でも51に過ぎず、対米向け施設も318と限られていたからだ。

水産物は圧倒的な輸入超過が続いているが、水産庁は2012年度の輸出総額1700億円を19年度までに3500億円に拡大する目標を掲げて、16年度には30億円、17年度には15億円を投じて事業を推進してきた。しかし、評価指標(アウトカム)として輸出総額を用いたのでは、HACCPに自力で適合してきた企業の輸出額も混ざってしまう。本来評価すべきは、水産庁が支援したHACCP認定施設からどの程度の規模で輸出が始まったかである、というのが公開プロセスの結論となった。

行政事業レビューの目的は事業をより有効に効率的にすることである。そのためには、効果と効率が表現できる評価指標を用いる必要がある。評価指標に議論が集中したのは、このためである。

「地域林業・木材産業機械設備リース導入支援事業」も議論された。林業経営体には小規模な家族経営体7.8万と組織経営体0.9万がある。このうち2千の組織経営体が素材生産の約7割を担っている。高度な林業機械の導入は作業効率と労働安全性を高めるが、中核的な組織経営体を中心に支援対象を絞り込むべき、また、リース以外の導入形態についても支援を検討すべきという結論になった。

「輝く女性農業経営者育成事業」では年に数十名の女性を東京に10回にわたって集め、次世代女性農業リーダー育成塾を実施している。しかし、延べ100名では数が少なすぎるし、東京に毎回わざわざ集める必要もない。より多くの女性が受講できるネットを用いた基礎講座と、それに合格した少数を集めて顔を合わせて実施する育成塾とを組み合わせるなど、事業の進め方を見直すのがよいという結論になった。

午後の公開プロセスについては明日の記事で。