各社の世論調査で内閣支持率が急落し、4割前後になった。この原因は明らかに加計学園で官房長官の説明が二転三転したことで、一過性の現象だと思うが、そろそろ安倍政権の寿命も見えてきたので、この4年を振り返ってみよう。
外交・防衛はよくやったと思うが、経済政策は宿題を先送りしただけで、何もしなかった。「アベノミクス」の中身は金融政策だけだが、この図のように空振りに終わった。その原因は黒田総裁の「異次元緩和」の失敗だが、根本的な責任は彼を指名した安倍首相にある。その司令塔は、リーマンショック・レポートで世界を爆笑させた今井尚哉秘書官だ。
特に消費税の引き上げを2度にわたって延期したのは大失敗だった。これは緊縮財政ではなく、所得税や法人税の引き下げとワンセットの税制改革(税収には中立)だった。ゆがみの多い直接税からキャッシュフロー税に移行することは世界的な流れなのに、首相は「景気が悪くなる」としかとらえられなかった。
黒田総裁の教科書にも「資本のグローバル化」が抜けていた。インフレで政府債務を減らそうとしたねらいはよかったが、法人税率が30%では、いくら円安になっても製造業は日本に戻ってこない。直接税を下げれば日本に投資が戻ってくる可能性はあるが、この点で首相と黒田総裁の考えは食い違った。経産省も本音では、対内直接投資(M&A)は増やしたくない。産業政策のお株が奪われるからだ。
この4年の教訓は、財務省を敵に回して経済運営はできないということだろう。首相には第1次内閣のトラウマがあり、その挫折の原因を「緊縮財政と量的緩和の早すぎた終了」に求める浜田宏一氏などの嘘を信じたのだろう。おかげで財源がないので財政出動もできず、メクラ撃ちで経済運営せざるをえなかった。
永田町では、早くも「次は麻生政権だ」という観測が出ている。私も悪くないと思うが、高齢だからワンポイントだろう。安倍首相の「中道左派」的な憲法改正案も、麻生首相なら通りやすい。
安倍晋三氏は民主党政権がめちゃくちゃにした政治を元に戻した功労者だが、如何せん学力が足りない。2期6年で、賞味期限は切れると思う。麻生氏も学力はあまり変わらないが、財務省を使いこなせる点が違う。資本主義のきらいな経産省から「大政奉還」し、グローバル化に対応できる新しい世代の登場を期待したい。