英軍と対照的。陸自のヘリ調達はシロウト以下

清谷 信一

AH-64D型ヘリ(陸上自衛隊サイト:編集部)

自民 安保調査会 防衛費はGDP2%程度に NATOを参考NHKニュース

自民党の安全保障調査会は日本の防衛費について、NATO=北大西洋条約機構がGDP=国内総生産の2%を目標としていることも参考に、厳しい安全保障環境を踏まえ、十分な規模を確保すべきだなどとする提言の案をまとめました。

まるで評論家。野党議員ならまだしも、与党議員のしかも「防衛の専門家」のセンセイ方の見識がこの程度ですから、アメリカ様に舐められて、属国扱いされて、あこれ不要で高価なオモチャを押しつけられるのも、むべなるかな、ですねえ。

防衛省、自衛隊のでたらめなカネの使い方の現状を全くみていない。買い物依存症、ギャンブル依存症がひどい、経済観念が全く欠如して破産寸前のサラリーマンの給料を2倍すれば、まともな生活するかといえば違うでしょう。より高い車買ったり、競馬に掛けるカネを2倍に増やすだけで、こどもの給食費とか、家賃に回すわけが無い。

ぼくの中学生の頃、社会科の教師で「北朝鮮は労働者の天国」とか真顔でいってたのが、おりましたが、ベクトルが違うだけで、センセイ方も同じ人種ではありませんか。

5月17日付けのジェーズ・ディフェンス・ウィークリー誌によると、英国防省は66機保有するWAH-64D(AH-64Dに相当)のうち、38機をAH-64Eにコンバートするとのこと。FMSで、ボーイング社が担当します。
コストは488.1億ドル、邦貨にして約537億円、一機あたりの単価は14億円です。この中にはクルートレーナー3、スペアパーツも含まれるので、実際の単価はもう少し安くなります。

ちなみに英国防省は95年にアパッチの採用を決定、96年に我が国とほぼ同じ67機のAH―64Dのライセンス生産を契約、約七年間で生産を終えています。調達単価は約60億円であり、平均単価85億円、初度費ふくめた実際の調達単価が約100億円を超える陸自のAH―64Dよりも安いことになります。

ちなみに英軍のアパッチはエンジンをロールスロイスにするなど、かなり自社仕様にしているのに対して、陸自のアパッチはネットワーク化の根幹と位置づけられていながら、コスト削減のためか、NATOや海自の護衛艦や空自のAWACSなどで使用されている戦術データリング・システム、リンク16が搭載していません。

アパッチのキモでありセールスポイントであるネットワーク能力をダウングレードしてこのお値段です。
しかも杜撰な計画で、調達数は62機から13機に減らされて、富士重工(現スバル)から訴訟を起こされました。この一件が原因で防衛省は初度費を払うようになったわけです。

そしてAH―1Sは、富士重工が1982年からライセンス生産し、2000年まで18年もかかって、89機が生産されました。初期の2機は77年と78年に一機ずつ輸入されており、調達に約四半世紀を費やしたことになります。

で陸自のアパッチは稼働率が低くて5.6機が飛べるに過ぎず、部隊としては戦う前から終わっています。
しかも今後の増数やE型へのアップグレードも発表されていません。

「本家」の米陸軍ではすでに84年から、AH―1の後継機であるAH―64アパッチの調達が始まり、97年には調達を終えています。にもかかわらず、わが国では米国がはるか前に調達をやめた旧式攻撃ヘリを延々とライセンス生産で値段を高くして調達しました。平均調達価格は約二五億円で、米国の約三倍、特に末期には調達数が減り、単価は48億円ほどまでに高騰しました。まるで旧式の軽自動車に最新式のベンツの値段を払ってきたようなものです。

そのAH-1Sは旧式化が激しいわけです。そもそもミサイルが命中するまで何分も空中で静止している必要があります。打ち落としてくれといわんばかりです。せめてミサイルやセンサーの近代化すればよかったのですが、馬鹿高いライセンス国産にしたせいかなされていません。しかも速度が遅くてCH-47にすら随伴できません。
こんな機体を維持しているだけでもカネと人員の無駄です。

そして鳴り物入りで登場し、国産大好きな軍事マニアが世界最高レベルと評するOH-1は250機調達予定が、僅か34機で調達打ち切り。しかも以前はブレードの不具合で長期飛行停止、現在もエンジンの不具合で長期飛行停止という不細工なありさまです。こんな機体を世界最高とか自画自賛している人たちは、まるでお隣の半島と同じメンタリティーです。

陸自のヘリ調達はシロウト以下です。

はっきり言って、あんたら馬鹿なの?無能なの?
と言いたくなるのはぼくだけではないでしょう。

実際問題としてとして攻撃ヘリの更新は必要です。
ですが、これは攻撃ヘリだけではなく、偵察・観測ヘリも含めての話となるでしょう。
攻撃ヘリをそのまま更新する必要はありません。攻撃ヘリの主たる任務はISRアセットとして上空からの監視や偵察、そして火力支援です。かつてのような匍匐飛行で敵戦車の撃破ではありません。

我が国の場合、想定している主たる有事はゲリラ/コマンドウ対処、島嶼防衛です。

そうであれば攻撃ヘリは一部にして、あとは汎用ヘリの武装化、この機体を偵察・観測ヘリと共用する。あるいは攻撃ヘリは全敗してすべて、汎用ヘリの武装化ですませる。何しろオスプレイなんぞという維持費が異様に高いオモチャを買ったので、陸自航空隊には予算がありません。
更に申せば無人機との併用や固定翼の軽攻撃機の併用も考慮すべきです。

昨今のスーパーツカノなどの軽攻撃機はジェット戦闘機なみの火器管制装置を有しており、ヘリよりも長時間現場上空に滞空できる、しかもコックピットは装甲を施し、対空ミサイル警戒機やエジェクションシートなども備えております。ISRや火力支援にはヘリよりも有利でしょう。しかも田舎の飛行場でも運用が可能です。
エアトラクター AT-802Uならば不整地でも運用可能です。しかもアパッチ1機のお値段で一個飛行体を揃えられます。

自衛隊が言う「我が国固有の環境」を鑑みれば軽攻撃機の導入は真剣に考慮すべきです。

攻撃ヘリにしてもAH-64Dを売り払って別な機体を買うことも考慮すべきです。例えば米国国防省やボーイングに売り、彼らがそれをE型にアップグレードして売れば商売になります。

例えば米海兵隊の使用しているAH-1Zという選択もあり得るでしょう。新しく建造する揚陸艦に搭載するなら、ばいい選択です。塩害対策もしており、狭い艦内のハンガーでも整備が容易です。揚陸艦に搭載しての長期の作戦や反復攻撃にも向いています。しかも米海兵隊と相互運用性が確保できます。島嶼防衛を考えるならばあり、でしょう。

アパッチを売り払って、AH-1Zを2個飛行隊分、5年ぐらい調達する。無論全機輸入です。
長期の運用コストを考えてもアパッチよりはお得でしょう。
間違ってもライセンス国産などさせてはいけません。

これと武装ヘリ、UAV、固定翼の軽攻撃機のポートフォリオを検討しては如何でしょうか。

更に申せば、米軍と同じ機銃に10倍払って(しかも不良品だったわけですが)調達することに何の疑問も感じないのが防衛省、自衛隊の金銭感覚です。

しかも政治的に押しつけられたといはいえ、オスプレイやグローバルホーク、AAV7は役に立つかどうか怪しいうえに、維持費が馬鹿高いので、既存の装備やその維持費、さらに他の予算を喰うことになります。当然ながらサイバーだのネットワークだのの予算にもカネが回らなくなる。かといって、既存の部隊を減らすとか、3自衛隊の予算配分を変えるとか、そういう改革をする当事者能力も無い。

また衛生は実戦に耐えられない、お医者さんごっこレベルで、医官の部隊充足率は2割を切っていますが、こういうところに予算はましません。それよりも新型「火の出るオモチャ」を欲しがります。

それで防衛費2倍にすれば枕を高くして眠れるというのですから、社民党や共産党よりもお花畑なんじゃないでしょうかね。そのような人たちが我が国の防衛政策を決定しているかと思うと背筋が寒くなります。

自衛隊を強くするならば、まずは野放図で、実戦を想定していないカネの使い方を正すべきです。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年6月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。