安倍政権が「共謀罪」法案を強行採決した理由はこれだ!

いわゆる「共謀罪」が成立してしまった。15日未明、衆議院会議で内閣不信任決議案が否決された。そして、続く参議院本会議では、参院法務委員会での採決を省略する「中間報告」という手続きにより採決を強行したのだ。

この法律の問題点を何度か書いてきた。だが、まさかこんな無茶苦茶で、横暴なかたちで、この法案が成立することになるとは思わなかった。

「ろくに答弁もできない金田勝年氏を法務大臣に就けているのは、安倍首相の高度な戦略かもしれない」という趣旨のことを、以前、書いた。野党が金田さん叩きにやっきになって、法律の核心に踏み込めないまま、30時間を費やしてしまったからだ。今回のような無茶苦茶なやり方を見ると、僕のこの憶測が当たっていたのではないかと訝(いぶか)しんでしまう。

そもそも僕は、「この法律がなぜ必要なのか」という疑問を、自民党の幹部たちに何度も聞いた。僕の番組にも出演してもらい、そこでも直撃した。しかし、納得のいく答えは、誰からももらえなかった。

代わりに彼らが答えたのは、世界で187カ国が締結している「パレルモ条約」に参加するために、この法律を成立させなければならない、ということだった。だが、それは本当か。だいたい「パレルモ条約」とは、マフィアなどの国際的な犯罪組織を取り締まるための法律だ。テロとは関係がないのだ。

安倍首相は、「一般国民は関係ない」「テロリストを取り締まるためだ」と繰り返し述べている。だが、テロリストは「テロリスト」というバッジをつけているわけがない。彼らは、一般国民の顔をしているのだ。だから、テロリストを取り締まるには、国民のプライバシーに入り込むしかない。

欧米では「共謀罪」法案と同様の法律がある。テロリストを取り締まるために、「盗聴」ができることになっている。ところが安倍首相は、「そんなことはしない」とも言う。とても、ほんとうとは思えない。どう考えても、それではテロは防げないだろうからだ。ゴマカシているのが、みえみえなのだ。

では、なぜ「共謀罪」法案の成立をこんなに急いだのか。いうまでもない。「加計学園」の問題があったからだろう。

そもそも、この件について、政府の対応はヘタすぎた。当初、官房長官の菅義偉さんは、文部科学省から出てきた文書を「怪文書のたぐい」だと言い切った。その後、文科省も、「調査の結果、見つからない」とした。ところが、文科省の前事務次官、前川喜平さんが登場し、状況が一転した。再調査をすることになったのだ。そして、今度は「文書はあった」という発表がされたのだ。

安倍首相は、はじめから、「岩盤規制に穴を開けるために、加計学園を応援した」と正直にいえばよかった。そうしておけば、ここまでこじれることはなかっただろう。だが、加計学園問題が混迷した。こうなっては、内閣の支持率は下がってしまう。だから、その前に「共謀罪」法案をなんとか成立させたい。

これが「共謀罪」法案成立を急いだ理由なのは、明らかだ。しかし、ツケは必ず返ってくる。国民を甘く見た安倍政権は、いよいよ内閣支持率を下げることになるだろう。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2017年6月23日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。