投票先を選ぶための時間はベテランと18歳のどちらが長い?

「投票は簡単だ」とは絶対に言えない

大学時代を含め、かれこれ9年ほど「若者と政治をつなぐ」をテーマに活動を続けています。そして、18歳選挙権となったこの1年半ほどは多くの中高での授業も行っています。
良く「投票って難しいんですか?」と聞かれる。

自分は、「決して簡単ではない」と答える事にしている。
でも、「投票先の選択に間違いはない。今のあなた自身なりに社会を考え、候補者の政策を見比べた結果の投票先選択は絶対に正しい。選択するまでにどれぐらい時間をかけるかは人それぞれだと思うが、決して簡単ではない」

そんな伝え方をしている。(実際は、話し言葉でもう少し柔らかく伝えるが)

そうだからこそ、選挙以外の時にも社会や街や政治家に関心を少しもって、選挙の際の投票先決定の判断の助けとする必要があると思っている。

実際に18歳で初めての選挙に行った方の話を聞いてみると、やはり結構悩んでいる。
各政党・候補者の政策を読み比べたり、比較サイトを見て見たり、各候補者のホームページを見比べたりと。

もちろん、投票に行く人全員が時間をじっくりかけているわけではないだろうが、多かれ少なかれ悩んでいるんだと思う。

そのあたりのことは過去に以下の記事にもう少し丁寧にまとめているのでよろしければ。

高校への出前授業で絶対につかわない2つの言葉。「投票はすぐできる」「一票で社会が変わる」

高校生は授業で政策を読み比べだしている。では大人は?

18歳選挙権になる前でも20歳になり始めて選挙に行く際には、投票先を決めるために色々と悩んだ経験があるという人もいると思う。この点で言えば、投票先の決定の際に悩むということはいつの時代も変わらないのかなと思う。

しかし、18歳選挙権時代に突入し、教育が変化した。

元々教育基本法の14条には

第十四条
良識ある公民として必要な政治的教養は,教育上尊重されなければならない。

と書かれているのだが、政治や選挙に関する具体的な教育はほとんどなされていなかった。

理由としては2点
1つは前述の14条の2項の以下の文

2 :法律に定める学校は,特定の政党を支持し,又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

そして、もう1つは「高等学校における政治的教養と政治的活動について伝えている文部省通知」。内容については長いので記述はしないが、政治教育の指導にあたって、現場の先生が後ろ向きになるような文言となっていた。

しかしながら、選挙権年齢の引き下げを受けた2015年秋に、昭和44年通達が取り下げられ、文部科学省が新たな通達を出した。(高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について

その通達の一部を抜粋すると

今後は、高等学校等の生徒が、国家・社会の形成に主体的に参画していくことがより一層期待される。
自らの判断で権利を行使することができるよう、具体的かつ実践的な指導を行うことが重要

といった、文章が並びそれまでの方針が180度変わったと言っても過言ではないと思っている。

これらの方針をうけて、多くの学校で主権者教育(政治的教養の教育)に関する授業がなされるようになった。文部科学省の調査によれば実に9割以上の高校が実施をすると答えている。

その中でも、授業の中で、各政党の公約を調べる授業も増えている。
小グループに分かれ、それぞれのグループが各政党を割り当てられ、生徒が調べまとめて発表して比較しあうといった取り組みである。

自分も執筆に関わった高校生向けの副教材(文部科学省・総務省)の中にもそのような授業案を組み込んでいる。

そんな経験を選挙権年齢に達する前から行っている学校が出てきているわけだ。
学校によっては数コマかけてこの授業を行う。
各党の公約をしっかりと読み込み、みんなで考える。
対して、大人はどうだろう。
選挙の際の投票先を決めるためにどれぐらい時間かけますか?
「いつも〇党に入れているから」「前もあの候補に投票したから」「あの政党のA政策がいいから」
そんな理由で投票先を決めている人もいるのではないでしょうか。
あなたは、投票に行った選挙の際の各政党・候補者の公約の細部まで読むことに時間をどれぐらいかけましたか。

社会人も、日常から社会や政治に触れる安心な入口がもっとあってよい

選挙の際の投票先の決定にかける時間に限らず、社会人がもっと日常的に社会や政治のことに触れる機会がないとだめだと思っている。

しかも、一人で調べて悩むだけでなく、誰かと話を共有したほうがいい。
特定の意図に基づく、「○○反対」「○○応援」という場ではなく、まず触れてみる・話してみるといった内容が良い。

生涯教育の機関である公民館が、そのような機会をもっと提供しても良いと思う。
自分が代表を務めるNPO法人YouthCreateでも若手社会人向けの企画を今後増やして行く予定です。

そして、日時が限定されるイベントではなく、いつでも入手できる情報があってもいい。
ーシャルイシューを発見する“旅”を提供しているリディラバという会社は社会課題の現場を見るツアーとウェブ上での情報発信の連動を作り、場と情報を提供している。

アナウンサーの堀潤さんが初めたGARDENでは社会課題とその解決のための支援の方法を例示したジャーナリズムを始めている。

複合的に入り組んだ社会の状況の考えのきっかけとなり、政局がもとである政策以外の情報がもっと人の目に触れる場所にあってもいい。加計学園のことが国会で議論され始めたから獣医師のことを考えるのではなく、口蹄疫や鳥インフルエンザのニュースの時に獣医師の事を知ることができるような情報があったらよかったなと思う。

最後に、一部、自戒も込めてのまとめにはなるが。
大人だから勉強の時間がない。大人だから目の前の仕事に関するスキルアップばかりに意識が行く。家族でも同僚同士でも政治の話はしないようにしている。そんな状況が徐々に変わっていけばなと思っている。

そのためには学生だけではなく大人が学びを続けなければならない。政治について考え話し合わなければならないと思っている。

いくら投票率が高くても、無思考な投票では公約を見比べて悩んでいる高校生に対して恥ずかしいと思う。
若者と政治をつなぐために引き続き頑張ります。


編集部より:この記事は、NPO法人YouthCreate代表、原田謙介氏のブログ 2017年6月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は原田氏のブログ『年中夢求 ハラケンのブログ』をご覧ください。