6月19日にニューヨーク連銀のダドリー総裁は講演で、「拡大局面がやや長期化しているが、実際のところまだ長く継続すると強く確信している」と述べ、物価に関しても、「インフレ率は望ましい水準を若干下回っているものの、労働市場の引き締まりが続き賃金も少しずつ持ち直すことで、2%の目標に緩やかに回帰するだろう」と述べた。
6月13日、14日に開催されたFOMCでは、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を年0.75~1.00%から1.00~1.25%に引き上げた。投票メンバー9人のうち8人の賛成多数での決定となり、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は金利据え置きを主張して反対票を投じた。カシュカリ総裁は16日にロイターとの電話インタビューで、利上げを見送るべきと考えるのは私一人ではないとの見方を示していた。
FOMC開催日の14日に5月の米消費者物価指数(CPI)が発表されたが、総合指数は前年同月比では1.9%上昇となり、前月の2.2%の上昇から上昇幅は縮小した。食品とエネルギーを除くコア指数も前月比0.1%上昇と予想を下回り、前年同月比では1.7%上昇と、2015年5月以来の低い伸びとなった。
これを受けて14日の米債は買われていた。今後のFRBの利上げが慎重ペースになるのではとの期待も背景にあったとみられる。しかし、ダドリー総裁はそういった観測を打ち消すべく、景気や物価に対して強気の姿勢を示した。
実はイエレン議長も14日のFOMC後の会見で、最近のインフレ指標の低下は一時的な事柄が要因と指摘していた。ダドリー総裁はイエレン議長と同じような見方をしているというか、フィッシャー副議長含めた執行部は、政策金利を長期の中立金利見通しである3%に達成させるという利上げシナリオは堅持しているとみられる。
今後のFRBのFRBの正常化スケジュールについては、利上げとともにバランスシート縮小も進めることが予想されている。4兆5000億ドルの保有証券縮小計画については年内に着手すると表明し、その手段も示した。満期を迎えた債券への再投資を減らすことで資産を縮小するかたちとなり、開始時の資産圧縮規模は米国債が月60億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)などは月40億ドルを上限とし、3か月ごとに上限を引き上げて、1年後には米国債が月300億ドル、MBSなどは月200億ドルとする。
イエレン議長は14日の会見でバランスシート縮小に関して比較的早期に開始する可能性を示した。つまり9月のFOMCあたりで決定してスタートすることが予想される。利上げについては9月にバランスシート縮小と同時に行うというよりも、少しずらして12月に決定するのではと予想される。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年6月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。