戦闘地域での捜索救難ができない空自が他国を指導する慢心

清谷 信一

防衛省がベトナム空軍等に航空救難分野の人材育成セミナー開催ASIAN PORTAL

日本の防衛省は、ベトナムの防衛分野における能力向上を支援する活動の一環として、「航空救難分野における人材育成セミナー」を6月26日から30日に開催する事を発表した。

ベトナム防空・空軍・関係機関などを対象として、航空救難に関する
能力構築支援「航空救難分野における人材育成セミナー」を実施する事を決定した。航空救難分野の能力構築支援は、初めての実施となる。このセミナーは、ベトナムの首都ハノイにおいて実施される。日本の防衛省からは、要員5人(内局1人、航空自衛隊4人)が派遣される。

自衛隊では平時のSAR( Search And Rescue:捜索救難)はできても、CSAR(Combat Search And Rescue:戦闘地域における捜索救難)はできません。

自分たちが攻撃さるような状況下の救助は想定してません。それが途上国に航空救難を教えてやる、などというのは自分たちの実力を正確に評価できないということです。それは戦場では死を意味します。指揮官はできると思ったミッションが実はミッション・インポシブルで、救難ヘリが撃墜されて終わり、という結末になります。

空自のUH-60Jは左右に大きな増槽をつけていますが、被弾したら火達磨です。

また搭載機銃は5.56ミリのMINIMIです。これでは射程が短すぎて役に立ちません。他国では7.62ミリ機銃、7.62ミリのミニガン(特殊作戦群は採用したようですが)、12.7ミリのM3などを使用しています。M2では発射速度が遅いし、俯角の時に射撃にも問題があります。ちなみに陸自のオスプレイはランプドアに設置する7.62ミリのM240及びM3を、FMSで調達します。

更に自衛隊の救難ヘリは自分たちが撃たれて負傷したときのことも考えていません。

フェースト・エイド・キットもお粗末で、やっと米軍のIFAKIIを導入するようです。陸自は当てにならないので、米軍のシステムを採用ということです。空自のヘリに限りませんが、ファーストエイドキット、サバイバルキットはお粗末です。個々のクルーがキットを持たず、箱にいれているだけで内容もお粗末です。勿論個々のクルーがモルヒネとかも携行できないので、負傷したらどうするんでしょうね?
実戦に対する想像力が根本的に欠けています。

米軍のSCARではM4で武装したクルーがラペリングでおり、救助対象者にはまず銃を向けます。その人物が本物かどうか分からないからです。果たしてそこまで「人を疑う」ことまでやっているのでしょうか。

SCARを想定していない「空軍」が他国の「空軍」にレスキューを教えてやる、というは不遜を通り越して滑稽です。むしろ英軍や仏軍のエキスパートを招聘して、自衛隊も一緒に学ぶべきです。
ちなみに英軍や仏軍ではレスキューと特殊酢作戦用ヘリを統合運用したりもしています。そういうことも自衛隊ではやっておりません。

自分たちは世界のトップレベルにあるかどうかは、思い込みではなく、冷静に諸外国の実情を調査した上で持つべきです。そうでないならば謙虚に他国に学ぶか、教えを請うべきです。根拠の無い自信は宗教です。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年6月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。