これで東京での維新の火は消えてしまうのかしら

早川 忠孝

会社帰りの人たちをターゲットに関東近郊も含めた浸透を図ろうと、新橋駅前の街宣など試行錯誤してきた東京の維新だが…(東京維新の会ツイッターより:編集部)

いい人もいたのになあ、と思わないでもないが、どうやら大阪の人たちが短気で、東京における維新の火を消してしまったような印象がある。

大阪の維新が日本の維新に脱皮する大きなチャンスだったと思うが、大阪の人たちだけの目で東京の問題を考え、小池さんと連携する道を自ら断ち切ってしまったように見えるのはもったいないことである。

渡辺喜美氏を維新の候補者に担ぎ出し、見事に渡辺氏が参議院選挙に当選してからは維新の副代表にしたあたりは結構可能性を感じさせたものだが、希望の塾の講師就任を橋下氏が断ったあたりから妙に維新の中が軋み始めていた。

日本維新の会と党名を変えたのはいいことだと思うが、結局は大阪の維新の会だったのね、ということがここに来て明白になった。渡辺喜美氏は、自分が維新と小池さんの橋渡しをすると意気込んでいたはずだが、橋下さんから梯子を外され、大阪の維新の幹部からも梯子を外されていたのだろう。

渡辺氏は独り相撲をして自分からこけてしまったようなものだが、維新の将来を考えれば結構いい線を追い求めていた風があるのだが、大阪の方々にはそれが気に食わなかったようだ。

渡辺氏が都民ファーストの候補者を応援したいと言い出している時に、これを許容すれば、維新は東京でもその基盤を拡げる可能性がある懐の深い政党だ、ということになったはずだが、大阪の方々は逆に渡辺氏をするという対抗処置を取ってしまった。

維新の方針はすべて大阪の方で決める、維新の方針決定には大阪以外の国会議員も地方議員も一切関与できないようになっている、という話を聞いてはいたが、それにしても維新の副代表である渡辺氏の除名も大阪の幹部の協議だけで決めることが出来るというのだから、外様の人はいつまでも外様だということがよく分かる。

これでは、東京都議会で議席を占めたり、各級選挙で勢力を拡大することは難しい。

発売になった週刊現代によると、維新の名前で当選できそうな候補者は皆無だということだ。
橋下氏が維新の政策顧問という地位を返上してしまったそうで、どう転んでもこの先橋下氏復帰の道はなさそうだ。

維新は、名称は変わっても、結局は大阪維新の会だということになるのだろう。
ちょっと勿体ないことだ。

維新とファーストには同じ匂いがする、と仰る方がおられるが、心配ご無用

先のことは分からない、というのが本当のところだ。

しかし確実に言えることは、ファーストには4000人近く集まった希望の塾があるということだ。
希望の塾にはそれこそ政治家になろうと志を立てた人もいれば、ひたすら日本の政治について学び、どんな形でもいいから世の中の役に立てるような人間になりたいと思って参集した人も大勢いる。

政治塾ではあるが、同時に、人間教育の場、学びの場といった趣があり、塾生には結構お歳を召した方も多かった。都議選候補者選抜コースに進んだ人は筆記試験に合格した300人程度でしかないが、筆記試験に合格したかしないかに関わらず、希望の塾が大勢の方の心に火を点けたことは間違いない。

都議選の公認候補に選ばれた人と選ばれなかった人との間にどれほどの差があったのかは分からないが、公認候補に選ばれなかった人や都議選に出ることを辞退した人の中にも高い志を持ち、将来への可能性を秘めた有為な人材がそれなりにいる。

希望の塾の中では政治活動を行うことを禁止されていたようだが、それなりに志がある人たちが集まればそこから新たな動きが生まれることは必然である。小池さんは東京大改革というスローガンを掲げたが、実は水面下で様々な動きが始まっている。

東京大改革は、いずれは日本大改革に繋がらなければならない類の政治運動であり、かつ社会運動である、というのが私の見立てである。小池さん一人に任せておくわけにはいかない、ということで、築地でも新たな動きを始める人たちが出てきた。

多分、これこそが小池さんの本当の狙いだったんじゃないかと思っている。

維新の場合は、選挙に出たい人たちが集まる政治家養成塾だったろうが、希望の塾は世の中の役に少しでも立てるようになりたいと思っている人たちが集まった社会人教育、人間教育の塾だったろうと思う。

単なる政治塾だと、選挙に出ること、選挙に勝つことばかり考えてしまう野心家ばかりになってしまい、風向きが変わるとあっという間にどこかに行ってしまう人が多くなってしまうだろうが、小池さんの希望の塾の場合は基本的には人間教育の場だろうから、希望の塾の塾生であったこと自体を誇りに感じる人が多そうである。

政治家養成塾としては食い足りない、物足りないと思う人がそれなりにいると思うが、希望の塾からは色々な人材が生まれる可能性があり、維新は橋下氏が離れたことにより失速を余儀なくされるだろうが、希望の塾や希望の塾を育てた都民ファーストは、これから様々な新しい運動を誘発する可能性がある。

私が受任顧問を引き受けた雄弁会や海援隊もその一つだろうと思っている。
私が講師として二度ほど参加した女性活躍推進提言支援ソサイエティもそうだと思う。

7月2日の都議会議員選挙が終わってから、それぞれに動き出すはずである。
多分、国政政党である小池新党設立の動きも本格化するはずである。

ファーストの分裂や崩壊を何となく期待している人たちがおられるのかも知れないが、回り始めた大きな歯車はそう簡単には止まらない。

単なる政治運動であれば案外簡単に座礁してしまうかも知れないが、小池さんが始めたのは本質は社会改革運動である、というのが現在の私の認識である。

それは違う、と大きな声で仰る方もおられるだろうが、少なくとも私はそう思っている。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年6月26日の都議選関連記事をまとめて転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。