昨夜、 高島宗一郎 福岡市長や 熊谷 俊人千葉市長、黒岩祐治 神奈川県知事らの自治体首長の皆さんと共に、山本幸三大臣に現在止まってしまっている国家戦略特区制度を正常稼働していただけるように要望書をお渡ししました。
その後日本プレスセンターにて、記者会見を行い、メディアの方々に国家戦略特区の意義を繰り返しお伝え致しました。
利益誘導ツールとして見られる特区
加計学園で一躍有名になった国家戦略特区ですが、一社に絞ったプロセスが不透明だったことにより、あたかも利益誘導のツールかのようにマスメディアでは批判を受けています。
民進党からは国家戦略特区廃止法案も提出されました。では、果たして特区は利益誘導のための制度に堕しているのでしょうか。
特区による改革の事例
そうではありません。様々な規制改革によって、新たな挑戦が生まれつつあります。
例えば養父市では、農家の担い手が減り続けています。そこで、それまでは禁止されていた企業の農業参入が特区によって可能になりました。結果として13社の企業が農地を持てるようになりました。
また、千葉市ではドローンを使って、マンションのベランダに直接荷物を宅配する実験を特区によって行いました。
ヤマト運輸の運転手不足問題は今や日本中に知られていますが、ドローンを使うことで、人力の配達の生産性を高めることができるようになるでしょう。
さらには、人口減少著しい仙北市では、田沢湖畔で自動運転バスの走行実験をDeNAさんと一緒に行いました。地方では人手不足でバスを運行することが非常に厳しくなりつつありますが、自動運転が導入されれば、そうした地方の足を復活させることができます。
そして手前味噌ですが、僕らは保育士試験の2回化を提案し、実現。全国化し、すでに保育士試験合格者の1割は2回目試験合格者になりました。
国家戦略特区は止まっている
こうした改革を機動的に行うことができる特区制度ですが、残念ながら現在は機能を停止しています。
例えば僕は、今は医療的ケア児が「普通に学校に行ける」規制緩和を特区で求めています。
医療的ケア児も学校や特別支援学校に通いますが、痰の吸引等の医療的ケアを行う看護師数が足りなかったり、学校のルールが追いついていなかったりで、結局「お母さん、同伴してくれるなら通学しても良いですよ」という運用になってしまっています。
結果として、(ほとんどの場合)母親が5時間も6時間も教室の片隅で、子どもの授業に付き添います。毎日、毎日。当然、母親は働くこともできず、非常に負担が大きくなってしまっています。
ここで、いつも利用している訪問看護の看護師さんが特別支援学校に訪問できたら、お母さんたちはずっと教室の片隅にいることから解放されます。
しかしそれはできません。なぜなら健康保険法第二款八十八条において、訪問できるのは居宅(子どもの家)に限られているからです。
こうした子どもの人権を制限するような規制は突破しなくてはならないので、一刻も早く特区を正常化し、議論を進めなくてはならないと思います。
透明化のためにしなくてはいけないこと
今回の記者会見、また先日の前川前事務次官との対話( 「どこに本当の「悪いこと」があるのか?国家戦略特区賛成派に、前川さんが語ったこと」 )を通して思ったのは、今後、国家戦略特区を再開する時に、以下の仕組みを付与していくべきだと思います。
1. 省庁間のやりとりも公開前提の議事録を残す
2. 特区での規制緩和の効果を客観的に審査する第三者機関
1つ目は竹中平蔵さんも会見の場でおっしゃっていましたが、双方が同意していない私的メモだと言った言わないになるし、(今回がどう、ということではなく)悪用もできてしまいますし、ミスコミュニケーションのもとになってしまいます。
2つ目は、規制緩和の費用対効果をきちんと測定し、良い規制緩和だったかどうか、を振り返ることができる仕組みが必要だと思いました。
規制は緩和することが目的ではなく、緩和して、そこで新たな産業ができたり、今まで助けられなかった人たちを助けられるようになることが目的です。
現在、規制緩和をめぐる議論は感情対立かイデオロギーに基づく代理戦争になりがちです。そこに、専門家によるエビデンスに基づいた独立第三者委員会をつくり、シビアに効果分析を行なっていく必要があろうかと思います。
以上、「加計学園問題は特区制度と切り分け議論し、それはそれでしっかりと情報公開をし、特区制度はより透明性高くブラッシュアップした上で、速やかに正常稼働させるべき」という意見の駒崎でした。
*NHKニュースのタイトルが「前事務次官に反論」とありますが、僕個人は特にそれに言及する立場になく、特区の正常化のみに焦点を絞って話しています。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年6月27日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。