最近、またワインがブームが到来している。国税庁の調査によればワイン市場は拡大傾向にあり、2012年以降、第7次ワインブームとよばれている。輸入ワインでは比較的リーズナブルな価格帯のチリを中心としたワインが台頭している。また、国内では日本産ブドウを使用した国産ワインの人気も高い。
行政も、この動きに呼応するように、ワイン特区制度をもうけて、ワイン起業をしやすい環境を整えつつある。蓮見よしあき氏(以下、蓮見氏)も、個人としては全国で初めてワイン特区制度を利用したワイナリーを立ち上げ、日本一小さなワイナリー経営者として話題を集めた1人である。
注目の「ワイン特区」とは
――「ワイン特区」が話題になっている。実際、蓮見氏も特区を活用してのワイナリー起業をおこなった。最近、ワイナリーを立ち上げたいという人のあいだで、この手法は話題になっているようだ。
「ワイン特区は大きく2つに分類されます。1つめが私も活用した最低醸造量を緩和したタイプ、もう1つが通称ハウスワイン特区といわれる民宿型のワイン特区です。『酒税法の特例』により、『特区』内において、地域の特産物として指定された果実を原料として果実酒を製造しようとする場合には次のようになります。」(蓮見氏)
「酒税法第7条第2項『最低製造数量基準(年間6kℓ)』の規定は、果実酒にあっては2kℓと、リキュールにあっては1kℓに緩和されることになります。」(同)
――簡単に説明すると、ワインを造るには税務署の許可が必要で、酒造免許を取得しなければいけない。そして、年間に一定量のワインを造ることができ、その造ったワインを販売できるということが条件になっている。
「その最低限必要なワインの量が年間6000ℓです。750mℓビンで換算して約8000本程度となり、年間に8000本生産して販売するのはある程度の規模のワイナリーではまったく問題ないと思いますが、零細農家規模のワイナリーではハードルが高いかもしれません。ところが特区を活用すると縛りが1/3に緩和されます。」(蓮見氏)
「6000ℓ(約8000本)の年間生産量ノルマが2000ℓ (約2667本) に緩和されるのです。これによって年間6000ℓを生産する場合よりも設備投資などが軽減できますから、通常のワイナリー設立の条件より少しハードルが低くなります。」(同)
――ハウスワイン特区では、民宿や旅館、レストランを経営している人が、お客様に対してのみ、自分で醸造したワインを提供できるかたちのものだ。
「すでに飲食店、宿泊施設を経営している方にはワイン造りをスタートしやすいかもしれません。ただし、来店、宿泊される方々への提供が原則で、醸造量緩和型免許のように不特定多数の方に販売することはできません。醸造量も自動的に制限されます。提供するワインは、その場でしか味わえないものの、大きな目玉になるということです。」(蓮見氏)
ワインぶどうが農業を元気にする?
――いずれにしても、特区もワイン造りにおいて最初のハードルである醸造免許を取得する難関をクリアするには、ワイン特区を活用するのは有効といえる。
「さまざまなかたちで人々がワイン造りに携われるようになるのは、業界活性化のためにも良いことです。これらの特区を活用してより多くの方が個性的なワイン造りをしてほしいものです。今後もワイン特区とワイナリー起業は密接な関係で推移していくと思います。」(蓮見氏)
「ワインぶどうを栽培して地域の農業を元気にしていこうと考える全国の自治体も、これからさらに増えていくことでしょう。」(同)
――本書は、「日本一小さいワイナリー」から、世界に通用するワインを目指すまでに成長したノウハウが公開されている。ワイン特区の活用方法、資金の調達方法、出資者の募り方など、筆者でしか語れないワイン造りの醍醐味は読み応えがある。
参考書籍
『はじめてのワイナリー』(左右社)
尾藤克之
コラムニスト
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