歌手の太田裕美さんは、私たちの世代で絶大な人気を誇っていた(「過去形」失礼)歌手です。たまたまユーチューブで40周年記念ライブを観ていたら、伊勢正三さん、大野真澄さんの3人で「なごみーず」を結成して活動していると知りました。(参照:jprime.jp)
そのきっかけは、「明日、ちょっと来ない」という軽い誘い合いから始まったものだそうです。そういう軽い関係が今でも続いているそうです。
つらつら思い起こすと、バンドのような形で活躍していたアーティストたちが独立してバラバラになると、何故か色褪せてしまうのが私には不思議でした。
ビートルズやサイモンとガーファンクルなどは解散しても各自が尖っていましたが、組んでいた時ほとの神々しさはなくなりました。甲斐バンドやツイスト(古い…)はボーカルだけが目立っていたのに、ソロになったら「???」という感じで光を失いました。AKBは言うに及ばず、SMAPや嵐のメンバーもソロで活躍するのは難しいのではないでしょうか?、
もちろん、小田和正さんやさだまさしさんのように、グループからソロになっても活躍している人たちもいますが…。グループの時とは若干テイストが異なっているように感じます。
ビートルズを例に挙げてみると(若い人たちゴメンナサイ)、ジョン・レノンとポール・マッカートニー以外の2人(ジョージ・ハリスンとリンゴ・スター)は別の人でもいいんじゃないかと私は思っていました。
しかし、ジョージとリンゴは、ジョンとポールの創作活動には無くてはならない存在だったと、今では考えています。2人の尖った才能がぶつかり合う時の巧みなバッファーとしての役割だったのかもしれません。それ以上の影響を与えていた可能性も否定できません。
ビジネスの世界でも、ヒューレットとパッカードの出会いが大きなシナジーを産んだと言われています。マイクロソフトもアップルも共同創業者(のような存在)がいました。スタンフォード大学からITの異才たちが出てきたのは、単なる偶然ではなく複数人による創造性のシナジーがあったからだというのが定説です。
ダニエル・ピンク著「フリー・エージェント社会の到来」にあるように、将来的には一つの組織に縛られないフリーランスが「働き方」の主流になるでしょう。現に米国ではフリーランス人口が急増しており、日本でも副業を奨励する企業が出てきています。
個々のフリーランスが一匹狼で仕事をしていけるのは、従来の知識労働者や職人までだと私は考えています。医師や弁護士は、”新しいものを産み出す”という仕事ではなく、既存の知識やスキルを習得して実践する仕事なので、複数人集まったからといって画期的なシナジーが生まれるものではありません。天皇の執刀医の天野医師のように、未熟な複数人よりも尖った一人の存在が重要なのです。
しかし、新しいもの(ビジネスや音楽)を創造するプロセスにおいては、複数の個性によるシナジーが必要だと、私は考えています。
数年後、十数年後は、「明日、ちょっと来ない」という軽いノリで集まったフリーランスの人々によって、創造的なビジネスが生み出されるようになるでしょう。飛び入りOKのジャズ・セッションのようなものかもしれません。
開かれた人間関係こそが、固定的な組織や一個人では成し遂げられない創造的ビジネスを産み出す土台になると考えています。スタンフォード大学がIT創業者たちを輩出したように。
そういう関係を築く上でもっとも大切なことは、決して排他的な人間関係にしないことでしょう。ガッチリ固まった仲良しクラブではなく、面識のない人間が簡単に出入りできる風通しのいい関係を築くことが重要です。
そのためには、各人があまり密な人間関係を築き過ぎないよう心がける必要があるのでしょう。昔から言われていますよね。「君子の交わりは淡きこと水の如し」と。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年7月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。