【映画評】パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊

渡 まち子
パイレーツ・オブ・カリビアン / 最後の海賊 オリジナル・サウンドトラック

かつて海賊討伐に情熱を捧げたスペイン人将校サラザールは、まだ少年だったジャック・スパロウにハメられ、“海の死神”として魔の三角海域に幽閉される。時は流れ、解き放たれたサラザールが死者の軍団を率いてジャックへの復讐を開始。最恐の敵サラザールから逃れるには、すべての呪いを解く“ポセイドンの槍”が必要だった。一方、ヘンリーは、父ウィル・ターナーの呪いを解くため、ポセイドンの槍を探し求めるが、彼の前に槍を探す手がかりを知る女性天文学者カリーナが現れる。それぞれの思惑が交錯する中、ポセイドンの槍を巡り、命懸けの冒険が幕を開ける…。

海賊ジャック・スパロウが活躍する大人気シリーズの第5弾「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」。今回は、すべての呪いを解く力を持つ“ポセイドンの槍”がキーとなって物語が展開する。これでもか!と言うくらい、スピーディかつド派手なアクションを見ていると、この“てんこもり”感とサービス精神こそパイレーツなのだと懐かしさに浸ってしまった。

キャプテン・ジャック・スパロウとは浅からぬ因縁がある、海の死神・サラザールは、復讐のためジャックを追うが、どこかで孤高の海賊ジャックに魅せられてもいる。ヘンリーとカリーナの若手コンビは、かつてのウィルとエリザベスの後継者で、フレッシュな魅力がウリだ。そして今回は、2組の親子のドラマが描かれ、特に意外な人物とつながるカリーナの出生の秘密のパートは、思わず感動してしまう。もともとはディズニーランドのアトラクションなのだから、ありえないアクションやご都合主義の展開は「楽しんだ者勝ち」と、最初から承知の上だが、本作はドラマパートまで出来がいいという嬉しい驚き付きだった。

メガホンを取るのは海洋アドベンチャーを得意とする「コンティキ」の監督コンビ。クライマックスの海のシークエンスは目を見張る迫力である。ジョニデ扮するジャック・スパロウは、よく見ると、驚くほど脇役的扱いなのだが、そこは笑いと強運とスターのオーラでカバーだ。もともとジャックは、誰にも、何にも、囚われることのない自由人。心から望むものへと持ち主を導く大切なコンパスをわずかな酒代のために手放そうが、ギロチンで処刑されかけようが、海の死神に追われようが、きっと海と自由を愛する誰かが助けてくれる。

それにしても回想シーンに登場する少年ジャック・スパロウは瑞々しい。長い長いエンドロールの後に意味深なワンシーンがあるが、続編の期待とは別に、若きジャックの前日譚も見てみたいものだ。
【70点】
(原題「PIRATES OF THE CARIBBEAN: DEAD MEN TELL NO TALES」)
(アメリカ/ヨアヒム・ローニング / エスペン・サンドベリ監督/ジョニー・デップ、ハビエル・バルデム、ブレントン・スウェイツ、他)
(サービス精神度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年7月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。