平成29年版通商白書に見るわが国企業の課題

山田 肇

経済産業省が『平成29年版通商白書』を発表した。第Ⅱ部第3章「イノベーションを生み出す新たな産業社会の創造に向けた取り組み」は、わが国企業の課題を鋭く指摘している。

OECDによる企業アンケート調査結果を再整理した「各種イノベーションを実現した企業の割合」によると、新規または大幅に改善された製品・サービスの導入で第一位カナダの40%に対して日本は第六位15%で、カナダに加えドイツ・イタリア・フランス・米国の後塵を拝している。

新規マーケティング方法の導入では第一位ドイツ34%で日本第四位22%、新規または大幅に改善された生産工程・配送方法等の導入ではカナダ第一位36%に対して日本第五位15%、企業の業務慣行・職場組織または社外関係に関する新しい方法の導入でも第一位フランス34%に対して日本は第4位で24%である。

無形固定資産投資額の各国比較も記載されている。米国では研究開発・資源探索権・著作権などの革新的資産への投資が59%で、情報化資産への投資が22%を占める。これに対して日本の場合には革新的資産は42%、情報化資産への投資は11%と低い。しかも、両国企業は2000年ごろからそれぞれほぼ同じ傾向なので、米国企業に対する日本企業の遅れは累積され続けている。

つまり、わが国の企業は新製品・サービスを市場に投入せず、新規マーケティング方法を採用せず、新しい生産工程・配送方法等にも無関心で、企業の業務慣行や社外関係の改善にも躊躇している。そのうえ、革新的資産や情報化資産への投資にも不熱心。これでは競争力が強化されるはずもない。

通商白書は現状を打破するために「人的資本投資を強化し、イノベーションを実現し、過当競争に巻き込まれない価格決定力の高い差別化された製品・サービスで、国内市場に留まらずグローバルな市場を開拓していくこと」をわが国企業に求めている。しかし、「世界と隔絶した日本のCEO意識」がその根底にあるのならば、経営陣の入れ替えから始める必要がある。