昨日、アゴラからYAHOOニュースに転載された「豊田代議士問題!メディア報道から透けてみえる違和感」の本文に誤りがあると、ご指摘をいただいた。当該部分は「的を得ていない」の箇所になる。「的を得る」は、「物事を正確に要点をついている」という意味で使用したつもりだったが、少々気になったので調べてみることにした。
調査結果について
<文化庁の見解>
最初に、「的を得ていない」を使用する人がどの程度いるのか調べてみた。『平成15年度「国語に関する世論調査」の結果について』(文化庁)によれば、50%以上の人が「的を得た」が正しいと回答している。「的を射た」よりも「的を得た」の方が回答を集めているということは、すでに、「的を得る」が一般的に浸透していることを意味している。
<三省堂の見解>
『三省堂国語辞典第7版』(最新版)の編集委員の飯間浩明氏は、自身のツイッター上で次のように述べている。また、三省堂国語辞典の扱いも飯間氏のものを踏襲している。
〔『三省堂国語辞典』第7版では、従来「誤用」とされていることばを再検証した。「◆的を得る」は「的を射る」の誤り、と従来書いていたけれど、撤回し、おわび申し上げます。「当を得る・要領を得る・時宜を得る」と同様、「得る」は「うまく捉える」の意だと結論しました。詳細は「得る」の項を。「『的を得る』は的を射る」の誤り、と従来書いていたけれど、撤回し、おわび申し上げます。「当を得る・要領を得る・時宜を得る」と同様、「得る」は「うまく捉える」の意だと結論しました。〕(原文ママ)
これは、従来の「誤用扱い」そのものを撤回したものである。「的を得た」は正しい表記であること。これは、編集委員の見解であることから大きな意味をもつ。
<国会での扱い>
立法府をつかさどる国会議員はどうであろうか。第193回通常国会(2017年1月20日~6月18日)における、本会議、委員会の議事録を調べると4回(参考人を含めると6回)確認できる。以下に抜粋したい。当該部分を「」で囲んである。
外交防衛委員会第23号
アントニオ猪木議員(無所属)
メルトダウンは起きていない、起きているなんかで、「的を得た」学者さんが誰もいなかったというのが記憶にあるんですが。
文教科学委員会第10号
大島九州男議員(民進党)
まさにだから専門職大学というのは、非常に私は「的を得た」、その大学の先生たち、高等教育が一つ大きく変わる、触媒になるということですね。
経済産業委員会第8号
石井章議員(日本維新の会)
「的を得た」、説得力のある御答弁、ありがとうございました。
決算委員会第4号
山田俊男議員(自民党)
決してそれは「的を得た」ことではないと、こんなふうに思うところであります。
<新聞・雑誌では>
それでは、新聞や雑誌はどうであろうか。紙版は「的を射る」が多いが、電子版のニュースや雑誌であれば、「的を得る」という表記がさほどめずらしくないことがわかる。意外と思われるかも知れないが、普通に「的を得る」は使用されている。
「的を捉える」と解釈する
「的を得る」は、「的は射る」もので「得るものではない」とする考え方がある。しかし、これも調べると「得る=捉える」の意味から派生したことが理解できる(前述、三省堂の飯間氏情報を参照)。「的を得る」=「的を捉える」と置きかえればわかりやすい。ちなみに、あなたは会話ではどちらを使用するだろうか。
・君の考え方は、間違いなく「的をいている」
・君の考え方は、間違いなく「的をえている」
これまで、私は、会話で「的をいている」を使ったことはない。また、一般的に浸透し、大手の辞典にまで登録されている言葉はほかにもある。それはもはや「誤用」とはいえない。また、「誤用」とは、個人にとっての尺度であり、必ずしも一般性をもつものではないことを申し伝えておきたい。
尾藤克之
コラムニスト
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