参政権を制限する無用な規制

NHKサイトに『“真っ黒”なサイト その意図は?』という記事がアップされた。Yahoo Japan!が東京都議会議員選挙向けに立ち上げたサイトを紹介したうえで、視覚障害者が選挙情報を入手できない問題を取り上げた記事である。

記事『紙の選挙公報が「民主主義のコスト」とは古すぎ』に書いたように、日本の選挙制度は紙にこだわり過ぎておかしなことが起きている。その一例が、紙による選挙公報と、紙をそのまま画像形式にしたPDF版の選挙公報である。画像形式ではテキストが抽出できないので、NHKが指摘したように、視覚障害者は選挙情報が入手できない。

画像PDFである理由は、総務省が紙の選挙公報を「そのまま」サイトに掲載するように求めているためだというのが記事の説明である。そのうえで、選挙公報を音声ファイル化したり読み上げ可能にしたりすると、「音声ファイルの読み上げの時間に差があることは、候補者間の公平性を保てず、選挙管理委員会が行う便宜供与の範囲を超えるのではないか」という見解を総務省は示しているという。

そもそも読み上げ時間に差が付いたのは、候補者が書いた選挙公報(の原稿)の文字数が違ったからである。大きなフォントで少ない文字数で公約を訴えるか、それとも小さなフォントでたくさんの文字数で訴えるかは候補者の選択である。この選択の自由を認めた時点で「選挙管理委員会が行う便宜供与の範囲を超える」という見方もできるではないか。しかし、それで「候補者間の公平性」が保たれないとだれが文句を言うだろうか。

それよりも、一部の国民は選挙情報が入手できず参政権を制限されるという、国民間の公平性が保たれないことのほうが大きな問題である。選挙管理委員会が候補者リストを掲載し、そこから各候補者のサイトに飛べるようにして選挙公報を廃止するといった大胆な改革も実現可能な時代に、紙にこだわり過ぎるのは困ったことだ。