世界に先駆けて超高齢化社会が現実のものになっている日本。誰もが長い人生を「自分らしく生きたい」と願っている。ところが現実はそう簡単ではない。食が豊かになりすぎたことで、罹患リスクは高まり「悩める晩年」が社会全体を巻き込んでいるからである。
今回は、『全ての病気は「口の中」から! 』(さくら舎)を紹介したい。歯科医師であり、米国抗加齢医学会認定医として「米国発、最先端の抗加齢医学を誰よりもやさしく語れる歯科医師」として活動をしている、森永宏喜(以下、森永氏)に話を伺った。
歯磨きの目的とはなにか
――皆さまは、歯磨きの目的をご存知だろうか。想定できる目的はいくつかある。「虫歯を予防して歯を失わないようにするため」「口腔内をすっきりさせたいから」「食後の口臭に気をつけるため」「歯周病を防ぐため」などが考えられる。
口腔内の細菌の増殖を抑えないと、将来的に歯を失うリスクが高まっていく。これらの問題を解決するには上手に歯垢を除去し口腔内をコントロールする以外にはない。それには一にも二にもブラッシングということになるだろう。
「口腔内の細菌を取り除くのに、ブラッシングに勝るケアはほかに見つかりません。歯磨きの目的は、ご存知の通り歯を磨くわけではなく歯垢を除去することです。よく一日に何回ブラッシングしたらよいのか、いつ磨くのが効果的なのか、などと聞かれることが多いのですが、一概には言えません。」(森永氏)
「人によって適したブラッシングというのが違うからです。たとえば、一日たった1回磨いただけで問題のない人もいますし、なかなか症状がよくならない人もいます。毎食後磨いていても、なかなか症状が改善しない人もいます。」(同)
――森永氏によれば、回数や時間よりも、それぞれに合った歯ブラシを用意し、丁寧にブラッシングすることが大切とのことである。就寝前は念入りにケアを施したい。
「歯垢をきちんと除去して残さない。そのためには、寝ている間は注意が必要です。就寝中は唾液の分泌が少なくなるため、唾液の殺菌作用が発揮されなくなり、細菌の働きが活発になります。細菌の増殖が盛んになることで歯垢が作られるリスクが大幅に上がります。ですから、就寝前の歯磨きは不可欠です。」(森永氏)
「そして、これは誰にも共通していえることです。寝る前にブラッシングをして、すでに作られている歯垢を除去すること。また、菌のエサになる糖分や食べカスなどを取り除いて、菌の増殖を最小限に抑えておくことは非常に有効といえます。」(同)
効果的なブラッシングとは
――就寝前のブラッシングと同様に、起床時の歯磨きも効果的とのことだ。毎食後の歯磨きが難しい場合でも、就寝前と起床時の歯磨きは最低限心がけたい。寝ている間に作られた歯垢は、早く取り除いておくにこしたことはないようだ。
「特に歯垢がつきやすい歯と歯の間、歯の根元の部分、噛み合わせの面など、ブラシが当たっているところをよく意識しながら、磨き残しのないようにきちんとブラッシングしておきましょう。磨きにくいところ、ブラッシングが当たらない箇所はデンタルフロスを使用して歯垢を除去してください。」(森永氏)
「また、口腔の機能が生活習慣、食習慣と相まって全身の健康維持に関わっているという研究成果が明らかになっています。これは、異常が表に表れる前の『未病』状態で歯科が関与すれば、病気の発症を未然に防げる見込みがあることを意味しています。」(同)
――最近では、口腔の機能が健康維持に大きく関わっているという研究結果に注目が集まっている。将来を後悔することにならないためにも、「歯と口の健康」がいかに大切か、改めて認識する必要性がありそうだ。
参考書籍
『全ての病気は「口の中」から! 』(さくら舎)
尾藤克之
コラムニスト
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