マイホームを購入する余裕の欠片もない我が家ですが、最近のマンション建設ラッシュに興味を引かれて中古から新築まで一通り見て回りました。筆者が初めて東京で一人暮らしをしていた約10年前と決定的に違う点は、貼り紙です。我がマンションの場合、主人が入居してから表記に英語が追加されました。以前から白人男性がお住まいだったものの、彼は日本語に不自由している様子はないため必要なかったのでしょう。ところが、中古マンションを訪れた折に書かれていた言語は中国語。新築マンションで中国人家族を何度も見掛けましたし、旺盛な需要と潤沢な資金を活用し、東京の一等地を物色していても全く不思議ではありません。
それは、米国でも同じこと。全米リアルター協会(NAR)によると、2016年3月から2017年4月までの外国人による中古住宅購入額は前年比49%増の1,530億ドル(約17兆円)でした。もちろん、2015年につけた記録を抜き過去最高を更新しています。おかげで中古住宅購入者に占める外国人のシェアは、約10%に。物件数では前年比32%増の28万4,455軒で、伸び率は金額の分に届きませんでした。
ドル高がマーケットを直撃したものの、どこ吹く風ですよね。金額ベースですから、価格の中央値で6〜7%近い上昇率がかさ上げした可能性は否めません。とはいえ、トランプ政権発足後に不穏な数字が取り沙汰されたのも刹那、米国の不動産は安全資産たる存在感をみせつけました。
特に外国人に人気の州といえば、アメリカのリゾート地が集中するフロリダ州です。続いて温暖な気候と太平洋側という立地が魅力のカリフォルニア州、同じく気温に恵まれた南部の要であるテキサス州が並びます。
ここまでくれば、どの国からの購入者が大半を占めていたかお分かりですよね?そう、中国人です。全体の約5分の1にあたる317億ドルに及びますから、その勢いはまさに昇竜のごとく。国別でみた金額ベースのトップ5は、以下の通りです。
5位 インド 78億ドル(全体の5.1%)
4位 メキシコ 93億ドル(全体の6.1%)
3位 英国 95億ドル(全体の6.2%)
2位 カナダ 190億ドル(全体の12.4%)
1位 中国 317億ドル(全体の20.7%)
(出所:NAR vis CNBC)
1軒当たりの購入額・平均値でも、中国人(注:香港、台湾を含む)が1位で78万1,801ドル(約8,760万円)でした。ただし、前年比での比較でみると様相は異なります。中国人全体の購入額は前年比16.1%%増に対し、カナダ人は113.5%増も急伸していたのです。また購入額の平均値も中国人が前年比16.5%下落の78万1,801ドルだった一方、カナダ人は同68.9%上昇の56万844ドルでした。
気になる日本はというと・・・トップ10にランクインし、購入者に占める割合は2%。過去10年間でみると1〜2%を行ったり来たりしており、2%台を回復したのは3年ぶりです。1位は中国人で2016年に続き14%、2位はカナダ人で12%とこちらも2016年と変わらず。なおカナダ人は2014年まで1位で19%だったものの、2015年に中国人に逆転されました。
足元で日本人やカナダ人、中国人をはじめ米国不動産に手が伸びた理由として、高齢化が一つの理由として挙げられるでしょう。温暖な気候に集中し、アジア系が移動しやすいカリフォルニアが人気であるのも頷けますよね。もうひとつの理由は、やっぱりトランプ米大統領だったかもしれません。NARは「移民政策が厳格化される前の、駆け込み需要ではないか」と分析します。トランプ米大統領は通商政策から気候変動問題、外交に至るまで様々な波紋を投げかけるものの、不動産市場ではプラスの影響を与えているようです。
(カバー写真:itsmelive/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年7月19日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。