仙台市長選挙で野党共闘候補の郡和子氏が当選した。与党候補の菅原裕典氏の応援には、与党幹部や宮城県の村井嘉浩知事、引退する奥山恵美子市長も応援に駆けつけたが、都議選敗北からはじまった流れを断ち切ることはできなかった。
30日に投開票がおこなわれる、横浜市長選は今後の政局を占う指針になることから注目が集まっている。私見ながら争点を整理してみた。前回投稿記事「横浜市長選の争点とは?しがらみ選挙の仁義なき戦い!」もあわせてご覧いただきたく。
結局カジノ誘致をするのかしないのか
2015年4月に今回の横浜市長選をうらなう注目すべき選挙があった。小樽市長選である。森井秀明元市議が、カジノ推進派の中松義治市長(自民、公明、民主、連合小樽、小樽商工会議所)を破ったことで話題になった。「小樽にカジノはいらない」と訴えた森井氏。地元のカジノに対する拒否反応は予想をはるかに超えていた。
小樽市長選結果(投票率60.21%)
当 森井 秀明 無新 38,132
- 中松 義治 無現 23,268(自民、公明、民主、連合小樽、小樽商工会議所)
- 吹田友三郎 無新 1,530
有権者数105,902人(男46,756・女59,146)、投票者数63,761人(男28,265・女35,496)の地域選挙など参考にならないという人もいるだろう。しかし、当時の小樽市議会は中松氏支持派が圧倒的多数だった。しかも、5者相乗りという本来であれば絶対優位の状況を、無所属新人が覆したので注目されることになる。
中松市長は、選挙直前に、カジノに批判的な声が多いことから「カジノを誘致しない」ことを公約にして巻き返しを図ったが、なす術がなかった。現職相乗りに関しても批判が多かった。市民は閉塞感の打破を無所属新人に求めたのである。当選後、森井氏は支持者を前に「カジノはやらない」と撤退の意向をしめした。
次ぎに、横浜市長選を俯瞰してみたい。現職・林市長は、自公の支持と菅/官房長官の後ろ盾で3選を目指す。林氏以外では、元衆院議員の長島一由氏(50)、前横浜市議の伊藤大貴氏(39)が立候補している。林氏は、自民支持層、公明支持層の過半数、さらに一部の民進支持を得ると予想。全年代からの幅広い支持をうったえる。
伊藤氏は、「自主投票」とした民進支持層に支持が広まりきっていない。支援は分裂しており、国会議員は、江田氏、真山氏が伊藤氏支持、牧山氏が林氏支持、水面下での駆け引きも活発におこなわれているようだ。共産、自由、市民連合も、伊藤氏を後押しするが、表立った応援もないことから野党連合に踏み切れていないと推測。
長島氏は特定政党の支持を受けていないため支持が広がっていない。伊藤氏はカジノ誘致と、政令都市では横浜市だけが導入していない中学校の給食実施の是非を争点にする。林氏は2014年に一旦はカジノ誘致を表明したが、カジノ反対派が予想以上に多く方針変更を余儀なくされた。選挙戦に入ってからは、カジノは白紙であると撤回。
これは、カジノを全面におしだすことで、反対派に加えて公明などの支持層も失うリスクを勘案したものと思われる。実際に、カジノ誘致には広大な用地とインフラ整備、アクセス良好な交通システムも必要になる。現在は、2期8年の実績を訴求した戦略だが、これが功を奏しており、選挙戦自体は有利に進めていると推測する。
無党派層が選挙の行方を左右する
神奈川新聞が24日に公開した世論調査によると、カジノ誘致に関して「反対65.2%」「賛成22.7%」、中学校給食では「給食を実施すべき53.4%」「家庭弁当にすべき9.3%」である。世論調査からは、「カジノ誘致反対」、「中学校に給食を導入して欲しい」、が民意の方向性と考えられるが各陣営の思惑はいかがだろうか。
また、カジノを推進する場合、あわせてギャンブル依存者への対策が必要になる。厚労省によれば、ギャンブル依存者は推定で536万人が存在すると言われている。日本の人口から算出すると、およそ20人に1人がギャンブル依存症を患っていることになるが、解決するための具体的な施策が講じられているとはいえない。
横浜市は神奈川最大の都市であり、市区町村では唯一法定人口が300万人を超えている。近年では、高齢者の増加にともなう社会保障費の圧迫によって財政は切迫している。さらに、生活保護受給者が増加することによる医療費も増大傾向にある。皮肉なことに高福祉の実現によって財政を切迫させているのである。
横浜市は東京と同様に、無党派層が多い。有権者の半数近いとも言われる無党派層の行方が選挙結果を左右する。横浜決戦は、いよいよ審判の日を迎える。
尾藤克之
コラムニスト
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