ギリシャ政府は25日に3年ぶりに国債発行を再開し、5年債で30億ユーロ(3900億円)の国債を発行した。
今年の6月には増税や年金の削減などの構造改革が進んだとして、一時中断されていた融資が再開され、ユーロ圏は85億ユーロの追加融資に応じると決めた。さらに今月20日に、債務軽減策の具体化を条件に国際通貨基金(IMF)が融資再開を決めたことで国債発行再開が可能となった。
今回の5年債の発行利回りは4.625%と2014年4月に発行した5年債の利回り4.950%を下回った。これはECBの緩和政策によりで国債利回りが低下していることも追い風となった。ただし、投資家の申込額は計65億ユーロと3年前の200億ユーロには及ばなかった。
ギリシャ政府は現行の第三次金融支援が期限切れを迎える来年の8月までに複数回の追加発行を目指す考えも示している。
このギリシャによる国債再発行の背景には、緊縮財政を政府が進めていることがあり、チプラス首相はさらなる緊縮財政を行うことを約束している。しかし、これに対しては国民の反発も大きいようである。それでも、少なくとも国債発行を再開できるところまで、特に市場の危機感が後退しているということを示すものとなろう。
ECBのドラギ総裁は20日の理事会後の記者会見で「(声明文の変更などの)議論は秋に行う」と明言した。これは緩和バイアスの解除を検討するのではないかと観測がある。 ドラギ総裁は今年のジャクソンホール会合に3年ぶりに出席するが、ここで何かしらの政策変更の示唆があるに違いないとの観測を市場は抱いている。そこに「議論は秋に行う」と示した以上、緩和バイアスの解除に向けたスケジュールは存在している可能性がある。
ECBのメルシュECB専務理事は「状況が正常化する中で、非伝統的政策が引き続き必要になる可能性は低い」と発言していた。ECBの緩和バイアスの解除そのものの理由はまさにここにある。状況が正常化していることを示す象徴的なものとして、このギリシャによる国債発行の再開があげられよう。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年7月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。