【映画評】ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走

夫トム、妻ジュリア、9歳の娘と7歳の息子とおじいちゃんというコックス一家は夏休みになり、自慢の新車でバカンスに出掛ける。最新テクノロジーが搭載されている真っ赤な新車は快適で、安全なドライブのはずだったが、突如ブレーキが効かなくなる。自慢のシステムがあっさり故障したハイテク車に乗ったまま、一家は時速160kmで高速道路を暴走することに。全員がパニック状態の中、家族の秘密が次々に明らかになる…。

暴走するハイテク車内を舞台にした密室コメディー「ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走」。整形外科医のトムは昔は学問に燃えていたが今は美容整形とシワトリ手術で金儲けに余念がない。精神科医のジュリアはキレやすい性格の上で妊婦のため情緒不安定。風変わりな娘は反抗期、やんちゃな息子はアメコミに夢中。一番心配なのはトラブルメーカーのおじいちゃん。こんな一家のバカンスがただで済むはずがない。役にたたない警官や一家の車をしつこく追ってくる男なども加わって、密室コメディーとカー・アクション、おバカな笑いとユルいスリルのノンストップ・ムービーになっていく。

個人的に、ギャグがツボにハマらず、さっぱり笑えなかったのだが、何気なくやっているカー・アクションが実はすごい。仏映画にはカーアクションの系譜があって、このジャンルには自信があるのだろう。CGではなく本気のスタントで演じられているというから、そちらの方がよほどクレージーだ。終盤、一家の行く手には人類史上最悪の渋滞が待ち受ける。さぁ、どうする?!ということで、ある奇策がとられるが、それができるなら、最初からそうすれば?!とツッコミたくなった。「世界の果てまでヒャッハー!」のニコラ・ブナム監督の作品にしては、やや消化不良。それでも家族の絆は強まったのだからヨシとしよう。
【50点】
(原題「FULL SPEED」)
(フランス/ニコラ・ブナム監督/ジョゼ・ガルシア、アンドレ・デュソリエ、カロリーヌ・ヴィニョ、他)
(暴走度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年7月27日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookページから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。