【映画評】東京喰種 トーキョーグール

提供:松竹

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人間と同じ姿をしながら人を喰らう怪人“喰種”が暮らす東京。人々が恐れを抱きながら生活する中、平凡な大学生のカネキは事故に遭い、ひそかに憧れていた、実は喰種の女性リゼの臓器を移植されて、半喰種となってしまう。自分が喰種化したことに苦悩するカネキは、以前から頻繁に足を運んでいた喫茶店“あんていく”で働くことに。そこは喰種が集まる店で、カネキは、店でアルバイトをする女子高生トーカや、店に集まる客もまた喰種だということを知る。同じころ、喰種を駆逐しようとする人間側の組織CCGの捜査が迫り、人間と喰種の戦いが激化していく…。

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人間を捕食する“喰種”が生きる世界で、半喰種になってしまった主人公の苦悩と闘いを描く「東京喰種 トーキョーグール」。原作は石田スイによる大人気コミックだ。この実写化は、公開前より出演者の清水富美加の出家騒ぎで、作品とは別の意味で大きな話題となってしまった経緯がある。そんなスキャンダルが先走ってしまったものの、重要なキャラクターのトーカを演じるこの清水富美加が、なかなか頑張っていて、いい演技を披露しているのだ。かなりホラー寄りでグロテスクな描写も多いが、異形のものの哀しさや苦悩を、激しいアクションを交えて描いていく。

喰種は水とコーヒーと人体だけを取り込む怪人だが、彼らの中にも様々なタイプがいる。何のためらいもなく人を喰らうものもいれば、できるだけ平和的に生きようとするものも。その中で人間と喰種の両方を生きるカネキは、自らの存在意義に葛藤するわけだが、本作ではその心理描写に割く時間が少ないためか、なかなかカネキの苦悩が伝わりにくい。だが若手演技派の窪田正孝は身体能力も高く、限られた時間の中でかなり健闘しているといえよう。特に自分の中にうごめくリゼの人格が時折カネキを支配する狂気の演技はすごい。さらに、カネキが被る髑髏(どくろ)風のマスクとそこから覗く片目だけの赤い瞳のビジュアルは、恐ろしくも美しく、印象に残る。物語のその先を期待してしまうラストだが、前述の清水富美加の出演が難しい状態では、果たしてどうなるか。ともあれ、自分の身体と一体化した捕食器官を使って闘う独特のアクションと、ダークな世界観を堪能できるユニークな作品に仕上がっている。
【60点】
(原題「東京喰種 トーキョーグール」)
(日本/萩原健太郎監督/窪田正孝、清水富美加、蒼井優、他)
(葛藤度:★★★☆☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年7月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。