安倍一強体制は既に崩壊したな、というのが私の見立てだが、しかし、自民党一強体制は当分続くように思えてならない。
何しろ野党第一党の民進党がだらしがないから、自民党の現在の在り様にあれこれ苦情を述べ立てても、結局は自民党に自省と改善を求めるだけに終わってしまう。
今の民進党の皆さんがどんなに頑張っても、皆さんに国政の舵取りをお願いしますね、ということにはならない。
大方の国民は、自民党がどこまで本気に自己改革に取り組んでくれるのかをじっと見守ることになるのだと思う。
森内閣の当時に自民党の支持率が8パーセントぐらいにまで落ち込んだことがある、という記憶だが、今の安倍内閣や自民党に対する支持率が一桁台にまで急落するとはとても考えられない。
8月3日の内閣改造で安倍内閣の支持率が反転上昇に転ずる、などということはないだろうが、稲田防衛大臣の事実上の更迭と岸田外務大臣の防衛大臣兼任の緊急措置のお蔭で、北朝鮮の弾道ミサイル発射事態にもどうにか対処できたのだから、国民の間にはそれなりの安堵感が拡がっていると見ておいた方がいい。
自民党は、腐っても鯛、というのは本当だろうと思う。
民進党の皆さんがいくら頑張っても、自民党を超える存在にはならない。
どういう内閣改造を行っても、安倍内閣は現状程度の支持率は維持できるはずである。
まあ、低空飛行を続けることにはなるのだろうが、直ちに墜落する虞はない、と言ったところか。選挙を戦って勝ち抜くだけの勢いを示すことはとても無理だろうが、来年の通常国会が終わる頃まで政権を維持する力はある。
安倍さんには、そのあたりのことが見えている頃だと思う。
安倍さんが憲法改正の発議を急ぐのは、多分そのあたりの情勢をよくよく考えているからだと思っている。
憲法改正の発議。やるなら、今でしょう。
憲法改正発議の段取りを付けることは、現時点では、そう難しくはないはず
神学論争を繰り返すことを厭わない生真面目な方々からは嫌われたり、呆れられたりするのだが、あらゆる揉め事について落しどころを探ることを長年の職業としていると、どんな難問に遭遇しても何とか解決してみよう、という気になってしまうから妙なものだ。
護憲、改憲の激しい対立の中にいて、護憲的改憲論を唱えてみたり、憲法改正ではなく憲法改革を説いたり、更には修憲論や加憲論を主唱する人が出てくるのは、大体は皆、同じような傾向を持っている人たちだろうと思っている。
私は、護憲的改憲論者である。
護憲、改憲の神学論争を何とか乗り越えたいものだと思って、護憲的改憲という考え方を打ち出している。
私より前に護憲的改憲論を主張されておられた方がいるはずだが、弁護士の中で明確に護憲的改憲という主張を著書を通じて対外的に公表された方はおられないのではないかと思っている。
私は憲法学者の方々の様々な著書に逐一目を通すような学究的な人間ではないので、私の認識は細かいところで間違っているところがあるかも知れないが、大筋は外していないはずである。
私が、「時代に合った新しい憲法を創る」(かんき出版)を書いたのは1998年8月のことであるが、あれから既に19年になろうとしている。
まあ、何とかして、私の目が黒い内に憲法改正の発議ぐらいはしてもらいたいものだと思っている。
発議の環境は既に出来上がっているのだから、内容さえよければいいだけの話である。
護憲、改憲の神学論争は、ほどほどに。
ご参考までに、「時代に合った新しい憲法を創る」という本の末尾に掲載されている私の一文をご紹介しておく。
「おわりにー新しい法治国家の誕生をめざして
私は、昭和20年9月、わが国の代表がミズリー号で降伏文書に調印した頃、長崎県佐世保市において呱々の声を上げた。まさに新生日本とともにあることを実感してきた。
私が大学を卒業した昭和44年は、医学部の紛争に端を発して大学紛争の嵐が吹き荒れ、学生は大学解体の雄叫びをあげていた。今から考えると、あの頃が戦後日本の時代転換の時だったのかもしれない。
大学卒業と同時に自治省に入省し、地方行政の現場で選挙に関する事務や折からのドル・ショックによる経済対策、公害環境に関する条例の制定、浅間山荘事件によって殉職した警察官に対する特殊公務災害補償制度の創設等に取り組んできた。昭和48年に自治省を退官後は法曹界に転じ、昭和50年弁護士登録し、現在に至っている。
この間、「人権擁護と社会正義の実現」を責務とする弁護士の仕事にひたすらぼっとうしてきたと自負している。
弁護士の業務改革をはじめ、司法制度全般の改革に取り組むとともに、日弁連、全労済協会の委員として自然災害に対する国民的保障制度の提言の取りまとめなども行ってきた。最後にようやくたどりついたのが、本書で取り上げた憲法改正問題である。
第三の開国と呼ばれる時代の大転換期を迎え、わが国は今、大きな危機に見舞われていると言われるが、この危機はかえって改革の大きなチャンスでもある。
21世紀を目前にして、幸い、今、新たな潮流が生まれてきている。
第一に、現在の国家安全保障システムの欠陥が認識され、これを是正するための、いわゆるガイドライン関連法が成立し、緊急事態法制についての議論も始まっている。
第二に、中央省庁改革関連法が成立し、敗戦時を除けば明治政府以来という抜本的な官庁の組織替えが2001年1月、新世紀の幕開けと共にスタートする。
第三に、地方分権整備法(地方分権推進一括法ともいう)の成立により中央集権から地方自治重視への流れが本格化し、国と地方自治体の関係が「対等、協力」の関係に転換する。
第四には、グローバリズムの観点から日本独自の経済障壁を取り除くための、いわゆる規制緩和の動きが本格化し、金融ビッグバンや産業構造の改革が進んできており、そのための大胆な税制改革が始まっている。
第五に、永年、聖域とされてきた教育問題に世間の関心が集まり、教科書問題や学校崩壊などが真正面から取り上げられるようになった。その成果として、従来法制度上の位置づけが曖昧なまま対処してきた国旗や国歌を法律によって制度的に確定することになった。
今、まさに新しい法治国家が誕生しようとしている。
国会の場で、憲法に関する諸問題が真正面から取り上げられようとしているが、本書が少しでも、憲法に関する自由で実り多い議論を促進させ、世論の形成に役立つことをこいねがっている。」
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年7月30日の憲法関連の記事をまとめて転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。