日銀はそろそろ軌道修正を決断すべきでは

7月28日に発表された6月の全国消費者物価指数は総合で前年比プラス0.4%、生鮮食料品を除く総合(コア)で前年比プラス0.4%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)で前年比ゼロ%となった。これは3つとも5月の数字と同じとなった。

電気代の上昇幅が拡大したほか、都市ガス代がプラスに転じたものの、ガソリンなどの上昇幅が縮小し、エネルギーにより総合の上昇幅は0.01ポイント縮小。生鮮食品を除く食料により総合の上昇幅が0.01ポイント拡大し、家庭用耐久財により総合の上昇幅が0.01ポイント拡大していた。

先行指標となる東京都区部の7月のCPIは総合が前年比プラス0.1%、コアが前年比プラス0.2%、コアコアは前年比マイナス0.1%となっていた。

日銀の物価目標であるところの全国コアCPIの前年比は今年1月にプラスに転じたあと、プラス圏を維持しているが、目標値の2%にはまだかなり距離があり、日銀も前回の展望レポートで物価目標の達成時期を2019年度頃に先送りしている。

その日銀はコアCPIや日銀版コアコアCPIなど値動きの大きな品目を除去した指数の方が、日本経済の潜在的な供給力に対する需要の過不足を示し、景気の良し悪しを反映するとされる需給ギャップの動きと連動する度合いが大きいとしていた(日銀のレポートより)。

しかし、コアコアをみると6月の全国の指数でゼロ%、7月の東京都区部はマイナスとなっており、日銀の物価目標からはさらに遠ざかることになる。

しかもこの数字は2013年4月に量的・質的緩和政策を決定し、その後、マネタリーベースは増加し続けているだけでなく、マイナス金利政策や長期金利操作まで加えた結果である。日銀の金融政策が物価の押し上げには寄与していないことは、これをみても明らかであろう。

原油価格の下落や消費増税による影響で上昇が抑制されているとの見方もおかしい。ここにきての物価上昇はその原油価格の下落が止まり反発してきたことが影響している。前回の消費増税は2014年4月であり、それによる直接的な影響は1年後になくなる。間接的な影響が仮に残っていたとしても、それは具体的に立証できるものではない。むしろここにきての景気の底堅さなどからは、すでに消費増税による物価への影響はほとんど無視できるものとなっているのではなかろうか。

日本の物価が上がらないのは何故か。それは日銀の金融緩和が物足りなかったわけではないことをこの4年で日銀は明らかにした格好となった。それであれば、非常時の対応とすべき異次元緩和の修正をそろそろ加えてもおかしくはないのではなかろうか。市場による過剰反応が恐いこととは理解できなくもないが、異常な政策が潜在的な副作用を高めていることも確かで、それが債券市場の機能不全等に現れている。日銀はそろそろ軌道修正を決断すべきではないかと思う。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年7月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。