今こそメディアは、働き方改革の矛盾を報じるべきだ

常見 陽平


4月にリリースした『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社新書)はお陰様で好評で。取材依頼、講演依頼が殺到中。

・・・同じ時期に出た、楠木新さんの『定年後』(中公新書)ほど売れず、悔しい想いをしているけどな。いや、あんなに売れるとは思わなかった。でも、関心が高いってことだよね。

財界展望新社
2017-08-01


『ZAITEN』の最新号にもインタビューが載った。大放談。ぜひ、読んで頂きたい。


先日も関西の勉強会で、大手企業の人事、労組の方向けに講演。内容もバカウケだったのだが、参加者との意見交換が実に有意義だった。働き方改革というか、労働政策に関する疑問点が実に赤裸々に。要するにアウトプットの質や量を落とすなと言われて、実行するのは難易度が高いよねという話と、さらには、結局、お金が必要で、人や広義の設備に投資をしないと駄目だよねという話。

前提として、人が命を落とすような働き方、心身の健康を害するような働き方は許してはならないし、放置してはいけない。ただ、働き方改革なるものの矛盾にみんなが気づいていて。人事の立場では言いづらい話をして頂き、感激。

なお、成功事例とされる例について疑っている方がいて。これまた嬉しい。ずっと論考やセミナーなどで批判しているが、各社の働き方改革の成果って、お前、それを成果と呼んでは駄目だろ、というものがあり。釈迦に説法だが、メディアや論者がとりあげるA社の取り組みで、事前と事後にこう変わったっていう話すら、これは怪しい。その取り組みだけの成果だとはこれでは測定できない。働き方改革の成果ではなく、市場の変化などの要因を排除できないからだ。

だから、メディアに出ている企業の改革成果というのは、公に言っては恥ずかしいものばかりなのだ。検証するとしたならば、いくつかの前提を揃えた上で、業務内容が同じで人員構成も揃えたA部署とB部署で、制度を入れた場合とそうじゃない場合で比較するなどしないとNGなのだ。

もちろんメディアも馬鹿ではなく。最近は、働き方改革万歳的な報道もだいぶ抑えられてきたかな。改革なるもので、労働者が結局困ってしまっては意味がない。だから、戦うのだ。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2017年8月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。