【映画評】スターシップ9

公害汚染によって地球が死にゆく近未来。エレナは代わりの星をみつけるため恒星間飛行の旅に出るが、一緒に旅立った両親は既におらず、たった一人で旅を続けていた。ある日、スペースシップが故障し、救援信号を送ると、その呼びかけに応じてエンジニアのアレックスがやってくる。二人は一目で恋に落ちるが、エレナはこの飛行が人類の未来を賭けた高度な実験であることを知らなかった…。

滅びゆく地球の代わりの惑星を探すヒロインと彼女が出会った青年の運命を描く異色のSF「スターシップ9」。少し不思議なテイストの作品が多いスペイン映画は、近年ではホラーやダークファンタジーなどの作品群で注目されている。スペイン発のSFというのは日本で目にする機会は非常に少ないが、本作には派手なアクションや奇抜なクリーチャーなどは登場しない。ヒロインの心の旅路を描く内容は、SFよりラブストーリーのテイストが色濃い。8割をコロンビアで撮影しているというのもユニークで、ネットフリックスの人気ドラマ「ナルコス」の制作チームが手掛けている。

出会った瞬間に一目で惹かれあったエレナとアレックスは運命の恋なのだが、エレナの飛行には謎めいた大きな仕掛けがある。宇宙空間でたった一人という設定は過去に何度か映画で描かれたが、女性という点は新鮮だ。ほぼ一人ぼっちで生きてきたエレナが、運命の人とはいえ、初めてリアルに出会う他者や新しい環境にあっさりなじむ様には苦笑してしまうし、ハリウッドのSFを見慣れた目には、本作のビジュアルはあまりにチープ。それでも人類の未来を、変化球ともいえる方法で手繰り寄せるラストはなかなか興味深い。
【50点】
(原題「ORBITA9」)
(スペイン・コロンビア/アテム・クライチェ監督/クララ・ラゴ、アレックス・ゴンザレス、ベレン・エルダ、他)
(ラブストーリー度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年8月7日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。